■寵猫抄 5

□暑中お見舞い申し上げます
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 “暑中お見舞い申し上げます ” 〜寵猫抄


ここ数年ほどは、梅雨というより雨季という勢いで、
台風まで加勢しての大雨になることが多い初夏のころ。
今年はその台風が来なかったことを珍しがられたものの、
桁違いな雨はやはり振ってのこと、各地で迷惑を振りまいており。

 『以前は空梅雨が多くて、夏場は水不足になったものだがの。』
 『そうでしたね。貯水湖が干上がってはニュースになっていましたね。』

そんなじめついた日々もそろそろ幕ということか、
あちこちからセミの声が急に聞こえ始めたし、
庭の雑草もいきなり背丈が延び出して、
毎日のように手を掛けている美人の秘書殿は暑さに弱い体質なため、
案じた主人から“業者に任せよ”との注意を受けている。
そろそろ日当たりよりも涼しい風が好ましいと思えるようになってきた時候で。
明るいリビングのフローリングの上、
まろぶように駆けまわったり、分厚いフットレストクッションによじ登ってみたりと、
それは腕白な島田さんチのおチビさん二人も、
陽だまりよりも風通りのいいところを奪り合いっこするようになったほど。

 『夏毛に変わろうとやっぱり毛皮は暑いんでしょうか。』

キャラメル色のメインクーンさんの方がお兄さんのはずが、
黒猫のクロちゃんの方が
居心地のいい場所、此処涼しいよと譲ってやってる様相なのがまた、
美人秘書殿にはツボというか萌えポイントならしく。
執筆中の島谷せんせえが書斎から出て来ると
リビングの方から床を拳で叩いているらしい “どんどんどん”という音が聞こえて来るらしい。

 “そういや、今年は神社での祭りはあるものか。”

流行り病への警戒から、様々な行事祭事が中止延期となっている本年度だが、
そろそろその威勢も収まりつつはないか、
いやいや警戒を緩めた途端、若い人らへの検査結果がどっと出たせいか
またまた罹患者数は上がっておりますよ?と。
世情に疎い主様へ編集のお兄さんと一緒になって注意喚起していたりするものの、
その祭囃子に似たものが毎日聞こえるほどには平和なお宅。
今も、

 「あ・これ、キュウゾウ。」

そんなやや鋭いお声に追われ、
すったかたーという勢いで廊下を掛けてくる小さな小さな綿毛の塊が見え。
一体何をやらかしたものか、リビングから逃げ出したらしい小さなお猫様なのへ
主人が吹き出しそうになっている、相変わらずの島田さんチであるようです。



   〜Fine〜  20.08.01.





 *手短ですが 久し振りにもほどがある猫さんたちのお宅を覗いてみました。
  勤め人ではないし、書いてるものも時代劇や幻想小説なため、
  島田せんせえは さほど世情には詳しくないものの、
  それでも シチさんがあれやこれやと注意喚起はしているようで。
  何もかにもが相変わらずであるようです。





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