ワケあり Extra 6

□もういいかい?
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平成最後の年となるこの1年は、
国際問題も人為的な事件も多かったが、
自然災害もひっきりなしにやって来て
なかなか記憶と記録に残りそうな勢い。
途方もない酷暑に いつまで夏なんだろとうんざりした日々だったのも
今は遥かに遠のいての過去のお話。
週末ごとというノリで結構な勢力の台風がなだれ込み、
うだるようなどころか災害級とまで言われた炎暑は
あっという間に吹き飛ばされてしまい。
時々思い出したように残暑が襲い来たのへフェイント掛けられたものの、
気が付けばすっかりと秋めいた空気がやって来ており。
時々、このまま秋になると思った?ウケる―とか言ってそうな (誰がだ)
暑中への逆上がりも挟んだものの、
コートはストールはどこに仕舞ってたっけ、
今年の秋冬ってどんな上着が流行なの?と、
いやにバタバタと 冬隣りと呼んでいい“秋”が駆けて来た感がある。

 「いっときは残暑がきつくて大変だったのにねぇ。」
 「そうそう。」

学園祭もカウントダウン状態となった折のこととて、
某女学園の三華様がたも汗をかきかき奔走したものだが。
そんなこんなも遠くなりにけりだよねぇなんて言いつつ、
中世の騎士の衣装を着せられた紅バラ様へ、

 「マントは短い方が動きやすかったでしょう?」

と、衣装の最終調整を掛けつつ、
チャイナファンタジーの戦国ものの演目でもこなすのかといういでたちのひなげしさんが、
ドレープたっぷりらしいフリフリな袖が覗くシフォンの小袖の上へ、
手の込んだ彩も豪華な導師服風長衣という仰々しい装いのまま、
凛々しくもたすき掛けをした恰好で騎士様のマントの長さや腕の付け根周りのあそびを調節中。
そんな二人の傍らで、こちらは何処のSWATですかいという、
様々なツールやギミックを作業着風の制服のベルトやポケットに収めて仰々しい、
でもでも、太ももに添わせたダガーナイフなんて妙に艶っぽく見えさえする、
ポニーテイルにキャップを乗っけた白百合さんが、
安全靴っぽいブーツの縁へ指を差し入れ、

 「こういうのは着馴れてないのよねぇ。」

と、苦笑をこぼす。

  ………………もしかして白血球さんのコスプレでしょか?(おいおい)

何と言いましょうか、
三人バラバラな格好なのは、何かの判じ物ででもあるものか。
一人一人を見る分には、いづれも凛々しいというかカッコイイで済むものの、
なんでこうもTPOが支離滅裂なのだろか。

 「学園祭へのいろんな仕込みがラストスパートだってのに。
  何でまた、それとは関係ないことへまで盛り上がるかなぁ。」

 「まあまあ まあまあ、
  楽しいことへ乗っちゃえってのは若い者の特権ですよぉ。」

 「米、言い方。」

相変わらずに端的な言いようをする紅ばらさんだが、
今のは白百合さんへも、勿論、ひなげしさんにも通じており。

 「ホント、ヘイさんたら。
  そんな言い方するのは、当事者じゃあなくて
  自分も“微笑ましいねぇ”なんて見下ろしてる立場の人だけですよう。」

昨夜は、何でそれが盛り上がっているものかのハロウィンで。
キリスト教の催事だと思ってるお人もいるくらい、
何の行事か実は知らないって人ばかりなのに、何でか日本の繁華街で大盛り上がりの不思議なイベント。
テーマパークが下手な盛り上げしたのが余計な煽りになったのか、
亡者が徘徊する晩だというくらいしか知られぬまま、
もはやコスプレ大会でしかない大騒ぎと化しており。

 「バレンタインデーの盛り上がりよ再びだわね。」
 「そもそも、クリスマス祝うならイースターも祝え。」

生まれた時からキリスト圏住いのひなげしさんが忌々しげに言い足したものの、

 「でもまあ、あたしも花祭りは知ってましたが、
  お釈迦様が入滅した日は最近まで知らなかったし。」

仏教徒なのにねと肩をすくめた七郎次さんが言っているのは、
釈迦牟尼様のお誕生日である“花まつり”は知られているが、
入滅なさった日 “涅槃会(ねはんえ)”はあまり知られてないものねぇという意味で。
(実際問題 正確なところは不明であるが、
中国で陰暦2月15日と定まったそうで、3月15日に催されるところもある。)

「大体さ、何をするものか判ってないままじゃあ、
 仮装してみたところで30分も経てば退屈にもなるってものでしょ?」

「そうそう。せめてお参りするんだとか、コンテストやバザーが開かれるとか、
 そういうイベントを立ててでもない限り、
 渋谷や大阪ならミナミ? 繁華街にそもそもの馴染みがない人には
 そんな場所へ来たところで 遊び方も判らないのだから間がもちゃしない。」

そのうちお酒の勢い借りて大騒ぎして暴れる馬鹿が出て来る。
お祭り慣れしてないんだから、マナーも何もあったもんじゃなく。

 「渋谷では痴漢に盗撮犯もわんさか出たってね。」

やれやれと肩をすくめたひなげしさんだったのへ、
白百合さんも呆れたように苦笑をし、

 「下着同然な際どいカッコしてるお嬢さん方も悪いよね、あれは。」
 
包丁振り回して暴れといて“殺す気はなかった”って言ってるよなもので、
触っていいとか撮影していいなんて言ってないって言い立てたっても
あんな大混乱な場でそれは通じない、
見てほしいからそういうカッコしてるんだろうって言い返されるのがオチ。
勝手にペタペタ他人へ触るなんてとんだ馬鹿野郎には違いないけど、
そして裁判になりゃあ当然のこととして余裕で勝てもするけれど。

 「草ぼうぼうなジャングルをビキニで散歩してりゃあ
  一斉に蚊に食われまくるもんでしょ?
  それと同じようなものだって、何で判らないのかしらね?」

当たり前の保身ってものを考えたらば、
毎年大騒ぎが報じられてて、常識のない馬鹿ばっか集まってるところへ
そんな危ないカッコして行くほうもおかしい。
お触り禁止と、ボディガード風のムキムキマンも同行してもらうとかしなきゃあね。
キモイ想いをしたのは気の毒ながら、ちょっと考えりゃ判るでしょうにねと、
若さゆえの無謀や考え無しでは済まぬ所業へ、
中身はおっさんな彼女らとしては(笑) ただただ呆れるばかり。

 ちなみに

この辺り一番の繁華街、Q街でも“ハロウィンフェスティバル”なるものが開催されたが、
仮装コンテストがキッズ部門と大人部門で行われ、
ハロウィンにちなんだ出店屋台のやはりグルメコンテストの投票が催され、
お酒のおつまみやディナー部門の表彰が、
20時台という健全な時間帯に行われた後、やはり健全にお開きとなった。
その催しの中、実行委員会の皆様から懇願されて、女学園の華としてお三方も担ぎ出されたらしく。
平日の夜中だってのにと、学園サイドからの叱言があったため、
18時台のガールズ部門の表彰式のアシスタントだけとの依頼にお付き合いしたのだが、
微妙に舞台慣れしていて威容もあったせいか、
壇上でミスやクィーンに選ばれたお嬢さん方より目立っていたのが、
問題っちゃあ問題だったかも。(笑)

 そして、その折に着ていた“仮装”があっという間にSNSで拡散。

是非とも同じ格好で週末から始まる学園祭の
様々なイベントの案内役をとの要請がたんと来たがため、
執行部の方々から早朝メールで叩き起こされたそのまんま、
クリーニングに出すとこだった衣装を慌てて取り返し、
(紅ばらさんのところと白百合さんのところは
家人の皆様が通常作業としててきぱきとそう運びかかっていたので)
あちこちほつれてないか、動きにくくはなかったかという
最終調整をしているところだったりするのだ。←今ここ

 「さて。お衣装のお直しも終わったことですし。」
 「開催の儀、ですね。」

流石に、賓客の皆様を前にご挨拶する開幕の儀は
これが現役最終行事となろう、
3年生のお姉さま方を中心とした執行委員らが長づきで居並んで執り行われており。
それの後に野外音楽堂で引き続いて宣言される“開演”の瞬間を、こちらのお3人が受け持っている。

 でもね、こういう格好していると、
 何か騒ぎがあったらばこのまま駆け出しやすいというか。

 ………。(頷、頷)

 今日は島田警部補来てますよ?

後援会やらOGやら、大人の来賓が多数訪のう開幕の日なので、
警視総監のお嬢さんも在校なさっておいでの関係から、
仰々しい警護はないながら、
直近の警視庁から現場で最も辣腕な存在が随身扱いでお越しだそうで。

 「う…。////////」

お転婆な発言した七郎次さんが真っ赤になって総身を止める。
そんな彼女の肩へと手を載せ、
さあさ、会場へ向かいましょうと、平八や久蔵が促して。

  お転婆なお嬢様がたの秋の祭典、いざ開幕ですvv




   〜Fine〜  18.11.02.





 *当日投下できればと思ったんですが、
  次の日が通院日だったので夜更かしできず、数日かかっちゃいました。
  日本のハロウィンってやっぱ異様としか言えません。
  何がしたいかよく判らん。
  蹴球の日本代表にW杯中だけ盛り上がるにわかファンのバカ騒ぎより性分が悪い。
  とうとう日本人も暴動起こすよになったかと、恥ずかしい思いもしましたよ。
  ワイドショー系も取材するからいかん。
  まあそういうの観ない層がやらかしてるんであって
  そういう手合いは いんすたやようつべとかで
  注目されてるの うれちぃとか盛り上がっているんでしょうけど。




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