ワケあり Extra 6

□【元サムライ】もう 年の瀬?【それはそれとして】
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今年はいつまでも秋が秋らしくなく、
台風も来るには来たが、残暑の影響か どかどかと大雨降らせて迷惑なだけだったし、
木々もいつまでも色づかなくて風情なんて欠片もなくて。
それが何とか色づき始めたと思ったら、暦は早くも師走へ突入しており。
12月に入ると、世間様はクリスマスに向けてウキウキした空気になるが、

 「年越しの準備でバタバタしてますよ、ウチの皆さま。」

小さかった頃ならいざ知らず、
少しは手際も良くなったんで アタシもお手伝いしたいのですが、
手順というか段取りがあるらしいので、
お気持ちだけでって言われて断られているのと。
コタツに入ってヌクヌクとしつつ、白百合さんが苦笑すれば、

 「ウチも。」

やはり同じコタツに入りつつ、紅ばらさんがちょっぴり俯く。
お持たせのロールケーキを皿に取り分け、
香りのいい紅茶を淹れて来たひなげしさんが ???と小首をかしげたのへは、

 「他でもない兵庫さんに “手伝わなくていい”って言われたんですって。」
 「あらまあ。」

しかもその兵庫さん、三木さんチで使っているお部屋の整理のついでに
他の場所のお手伝いにもって奔走し始めちゃったんで
結果として相手してもらえなかったってのがあってねと付け足されたため、
二人の微妙な間柄、特に久蔵側からの不器用な甘えようを知っているひなげしさんが、
判ってて持ち出した白百合さんと意味深な目配せをし合いつつ、

 「あらあら、まあまあvv」
 「〜〜〜〜〜。/////////」

別にそれで拗ねてるわけじゃあないって? どう見ても拗ねておいでですよ?
ああはいはい、判りましたよ、このお話はもう持ち出しませんてばと、
相変わらずに仲のいいやり取りを繰り広げている此処は、平八の下宿先である八百萬屋の居間だったりし。

「期末も終わってやれやれだよね。」
「うん、とりあえずは解放感〜ってとこ?」
「そう思って、はい、田舎じるこで乾杯〜vv」
「わあ美味しそうvv」
「…vv」

ケーキや紅茶に続いて小ぶりの椀を並べられ、
白玉の入った汁粉にお嬢様がたがほこほこと微笑む。

「では、乾杯〜vv」
「………vv (微笑) …っ☆」
「ああほら、まだ熱かったんですね。」
「湯冷ましの白湯ありますよ、はい。」

猫舌なお友達なのも承知していたのでと、用意は万全。
どうぞと手渡された渋めの赤のマグカップを受け取った紅ばらさんへ、
あーしてごらんなさいと世話を焼く七郎次なのも、
白湯を一口飲んでから、そのまま素直に口を開ける久蔵なのもまた相変わらず。

「年賀状はどうしたの?
 お二人ともお付き合い関係にたくさん出さなきゃならなさそう。」

お屋敷の片づけや迎春準備は家人の仕事だとしても、ではお付き合いの方は?と
そちらは故郷の知人らへクリスマスカードをとうに発送し終えたらしいひなげしさんが問えば、

「ん〜、ウチは父様母様が勝手に連名で出してるから お付き合い系はそっちへ丸投げだよ?
 日頃 引っ張り回すんだからそのくらいはやってもらわないと。」
「………。(頷)」

それなりのお家の令嬢たる二人だが、それならならで、勝手のいい仕組みとやらがあるらしく。
いやいや自分でやりたいというのなら、その方法までもを開拓せにゃあならないのだろうから、
今のところは丸投げでいっかとなさっておいでなところが、
親戚筋からは、反抗期しらずの素直なお嬢様がただなんて言われてもいるらしかったが、

「やってくれるっていうのに、わざわざ反骨心にまみれた独立心なんて立ち上げなくても。」
「………。(頷)」

あ、さてはめんどくさいって思ってますねと、そこは素早くピンときたらしき平八に揶揄されて、
バレたかと照れつつも、そこはさすがに十代に入ったばかりのお子様でなし、

「当たり前でしょ?使い勝手のいいものは使わなきゃ。先人の知恵は尊ぶ方ですんでね。
 あ・勿論大切にしなきゃいけない人脈枠ってのは毎年上書きしてますよ?」

うるさ方ってのはいつまでも変りませんからね、
へそ曲げられて余計な騒ぎ起こすより、適当にはいはいって流した方がいい場合もあると。
そんな達観した言いようが出るのは、そういう家柄なりの学習か、
はたまた“過去”の経験値がものを言ったか。(笑)
それこそそれ以上の深堀は無粋なので、平八もくすすと笑っただけで言及は辞めた。
店の方で流しているBGM、クリスマスソングがかすかに聞こえて来たものだから、

 「そういやクリスマスだねぇ。」

うっかり忘れてたような言いようをする七郎次であり。
とはいえ、それもまたしかたがない。
ミッションスクールならではのミサがあるので
冬休みの前哨戦みたいに早めに試験休みに入っても
そのまま長期の海外旅行なんてのへは出掛けられない環境だし、

 「お出掛けの予定は?」

平八に訊かれた七郎次、小さなデザートスプーンを宙で留めると、

 「ん〜っと、画壇系の晩餐会がひのふのみぃの。
  久蔵殿はホテルの方のご贔屓筋から引っ張りだこだろからバリバリに忙しいはずだよね。」
 「………。(…頷)」

ヘイさんだって、この店のお手伝いやら、ご両親と一緒する学会がらみのあれやこれやあるんでしょう?
う〜ん、そろそろそっちの会合からは卒業したいんですけどもね。

「遠縁の孫扱いなんだもの、ちょっとなんて言うか退屈が過ぎるというか、
 同じ工学でももっと今時の話をしたいというか。」

ああ其処は判る判ると相槌を打つ白百合さんと紅ばらさんも、
親の世代のお付き合いがそろそろ堅苦しいなと思うのだろう。
それこそ反抗期じゃあるまいしで、
親御は好きだが、周辺の大人たちに色んな人がいるものだから、
微妙な老害相手だと辟易しちゃってしょうがなくもなるらしく。
とはいえ、
想うお人らも この時期はそれぞれお忙しいので構ってもらえぬ。

「退屈にしとくと何始めるか判らんしなんて不名誉な言われようしてますけど。」
「それはないよね。」
「…、…、(頷、頷)」

ちょっと討ち入りの衣装着て夜回りしてみたり、
焼きイモの屋台引いてみたりしただけなのに。
お客さんが集まっちゃったのはびっくりだったね。
五月蠅いって叱られるかと思ったら珍しがられちゃって。

 …………などなどと、

ちょっと待って、それって名家のお嬢様がたの所業としては
十分 制止の声がかかる案件じゃあありませんか?と。
ちょこっと物申したくなった人、手を上げて。(笑)

相変わらずなお嬢さんたち、相変わらずの年末をお過ごしになる予定らしくて。

 「ウチの店も忙しくなるけど、大晦日の宵だけは空けてあるの。」
 「そうなんだvv 今年も一緒にお参りに行きましょうね?」
 「…、…、(頷、頷)」

紅ばらさんも、護衛係の丹羽さん振り切って出て来る所存ならしく、
どんな年末になることなやら、とりあえずは


  Merry Merry Christmas!



   〜Fine〜  19.12.23.





 *討ち入りは12月14日、
  そいやコールドムーンっていうスーパームーンも観られたそうで。
  12月26日は部分日食だそうですよ。
  15時前くらいから始まるとかで、下の方が1/3くらい欠けるとか。
  バタバタ落ち着かない年末ですが、皆さま良いお年をvv (前倒しが過ぎる)




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