シリーズ小説

□ごめんなさい、私が
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それに気づいたのは、あの人と話す事に喜びを覚える前から。


最初は思い違いかと思った。


けど、その視線は勘違いなんかじゃなく。


しっかりとした意思を持って見つめているのだとすぐに分かった。















「きーくっ!今日のお昼はルートも誘ってパスタ食べに行こうよ!」

「えぇ、いいですね」




強くなる、その視線の意味に気付きながらも、私はアーサーさんと話す事を止めようとしなかった。


そしてそれは、次第に私とアーサーさんが近くにいるだけで向けられるようになった。


その視線は、とても悲しそうで。







「今日ね、俺ちゃんと朝一人で起きれたんだよ」

「最近は遅刻も減っていますね。凄いです」

「本当?嬉しい」



フェリシアーノ君と一緒にいるのは楽しい。
明るい笑顔、声、話題。

ルートさんも、とても優しい。





だから、お二人には迷惑をかけたくない。



だから、どうか気付かないでくださいね。





「菊、きーっく!」

「あ、すみません。ちょっとぼーっとしてしまって・・。」

「何かあった?顔色、あんまりよくないけど・・。」




ダメだ。

何をしているんでしょう。

しっかりしなさい。



「大丈夫ですよ。ちょっと昨日遅くまで起きていたので寝不足なんです。」

「本当に?何かあったら言ってね?」

「ありがとうございます。でも、本当に何でもないですから。」



あぁ、優しい。

迷惑をかけたくない。

不安にさせたくない。

困らせたくない。

幻滅されたくない。









「それよりルートさんを探しましょう。ね?」

「うん!そうだね!お腹すいちゃった」















もしも、気づかなかったら。





『どいう・・、ふざ・・・・な・・・・・、』




「あれ?何か声がしない?」

「えぇ、本当ですね」





もしも、気づいても立ち向かえたなら。





『君は、・・・バカ・・・・かい・・か・、』




「あ、」

「どうしたの?・・菊?」







そして、もしも、私が彼を好きにならなければ。





『好きなんだぞ、アーサー』







そんな仮説ばかり。




ではもう一つ加えて。






もしも、彼の事を、綺麗に忘れれたなら










きっと、みんなが幸せ。









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