シリーズ小説

□君の横に
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人を好きになる事は素晴らしい事だと思う


きっと、たくさん持っている感情の中で一番厄介で、でも一番大切で尊いものなんだ


誰かを好きになる事に理由なんていらない


誰かを好きになる事に資格なんていらない


誰かを好きになる事に、良いも悪いもない




だけど、大切な人が悲しんでいるなら助けたい

望まれていなくても、俺の自己満足でエゴだとしても










「ルート、ねぇ」

「どうした?」



そんなに混雑もしていないが静かでもない空間

パスタをくるくるとフォークに巻きながら思うのはただ一つ

大切で大好きでしょうがない友人の事



「俺はどうしたらいいのかな。俺は、何か出来ないのかな。」



誰かを好きになる事はとっても素晴らしい事だと思う

素敵な事だと思う

人の恋愛事情をとやかく言うつもりなんてない




「ルート、俺は菊が好きだよ」

「・・・あぁ」

「菊は優しいし、ご飯もおいしい。とっても可愛くて、温かくて・・・、すごく好き」




あの小さな身体で全てを背負おうとする


優しくて、優しくて、底なしに優しいから


すごく、すごくすごく菊はみんなに優しくて、みんなに甘い


自分には、すごく厳しいのに




「菊と一緒にいて笑いかけてくれたとき、すごく俺はやっぱり菊が好きだと思うんだ」




菊が俺の名前を呼ぶ声が好き


俺を見てくれる時の目が好き


小さな手も、柔らかい頬も、太陽の光できらきら光る黒い髪も全部全部


菊が好き、外も中も過去も未来も


きっと俺はずっと菊が好き





「菊に笑っていて欲しい、俺は、菊を傷つけてまで奪う事はできない」




アーサーとアルフレッドみたいに


もしかしたらフランシス兄ちゃんもかも知れない



俺は、菊が好きだけど


菊を奪おうなんてそんな事は出来ない


今の関係を壊すのが怖いし、菊が傷つくのが怖い


それに、自分が傷ついて菊と今まで見たいに接する事が出来なくなるのが一番怖い




「俺、臆病者なんだ。凄く怖いし、自分が大切だから・・・」

「・・・菊は、俺たちに心配をかけないようにしている」



ルートはいつの間に食べ終わったのか

コーヒーを一口飲んで、また口を開く



「今の俺たちに出来る事は、何もしない事だ」

「何も、しない・・・?」

「あぁ、今までどおりに接する事だ。気づいていないふり」




菊は優しい


いつかたくさん背負いこんで、菊自身が潰れちゃうんじゃないかって・・・


凄く、心配になる





だけど、今はまだ、やっぱり




「いつか、菊が膝をつきそうになったら支えてやろう。」



ルートは強い


それに、優しい


いつだって、俺に教えてくれる




「それまでは俺たちは横で一緒に立っている事が、菊も喜んでくれるんじゃないか。」




俺だけじゃきっと菊を助ける事なんかできなかった


でも、ルートと一緒なら助けられるかもしれない


ううん、助けなくっちゃ


だって、菊は大事な大事な友達だから
























人を好きになるのも愛するのも素敵な事


他人の恋愛事情に口出しするなんて野暮な真似だけど


友達が困って、辛そうだったら助ける


だって、友達だから




「ルート、次は菊も一緒にご飯食べようね」

「あぁ、もちろんだ」






菊、菊、きく


そばでいるから


だから我慢しないで



俺達がそばにいるからね






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