短編

□来年も再来年も、その先もずっと
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桜がちょうど見ごろだと本田が楽しそうに話すから

一度見に行ってもいいか、と聞くとふたつ返事でOKしてくれた。








「あ、アーサーさん。お待ちしておりました」

「あ、あぁ。」



本田は笑顔で迎えてくれた。

そのまま日本のマナーどおり玄関で靴を脱いで中にはいると縁側に通された。










「これが桜か?」

「はい、どこか桜の名所へ案内しようかとも思ったのですがその・・。」

「ど、どうした?」

「いえ、そういう名所などには・・、人が多いので、」



そういう本田の顔は真っ赤で

俺もだんだん自分の顔に熱がたまってくるのが分かった。



「そ、そうだな。本田の家なら、ゆ、ゆっくりふふふ、ふたりでいられるし、な!」

「す、すみません!そんな爺のくせに」

「い、いや!俺は本田とだったらどこでも楽しいが、や、やっぱり、その二人で、いたいと、思う・・」



本田は頬を染め、慌てて謝る。

そんな姿が可愛くて愛おしいと思うのに俺は気の利いた言葉すらいえない。



あー、もうかっこわるい。

たぶん俺の顔は本田以上に赤い気がする。

ちら、と本田を見ると本田も耳まで赤くなっていた。




「あ!すみません、お茶もださずに!」

「ほ、本田!」



慌てて立ち上がる本田の手をとっさに握る。

ちょ、俺何してるんだよ・・。

そのまま視線を彷徨わせていると、庭の桜が目に入った。



「桜が、綺麗だな。」

「え?」

「ら、来年も、桜が見たいんだが・・。」



そう言うと本田はふわっと花が開くように微笑んでくれた。





「えぇ、ぜひ。」







END

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