短編

□君の笑顔が大好きだから
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今日も今日とて俺の想い人は他の男を見つめている。
















「あ、菊ちゃん!久し振り」

「フランシスさん、どうもお久し振りです」




ふわっとした柔らかい笑顔でぺこ、と小さく頭を下げる菊ちゃん。

俺の想い人。

本気の相手。



この愛の国のお兄さんが本気でほしい、と思った相手。



その相手は他の男をみる。



その漆黒の瞳で。



全てを飲み込みそうなその瞳で。



しっかりと光を宿すどんな宝石よりもきれいな瞳で。








我儘メタボと元ヤン紳士。



味覚音痴兄弟を・・・。











「おい、フランシス。」

「げ、アーサー・・・;;」

「なんだよ、その顔は?あ、本田!ひ、久しぶりだな!」

「お久し振りです、アーサーさん」




俺をみて嫌そうに顔を歪めていた元ヤン紳士は

菊ちゃんの姿を見つけたとたん、頬を少し染めた。キモい。





「ほ、本田!この前言っていた紅茶が手に入ったんだ」

「そうなんですか!良かったですね」

「あぁ、それで、だな・・。もし良かったら今度飲みに来ないか?」





あーぁ、顔赤くしちゃってさ、ヘタレにも程があるよね。

これだからヘタレ初期装備の奴は嫌なんだよねぇー

菊ちゃんが汚れるでしょうが。




「いいんですか!ぜひ」

「べ、別にお前の為じゃないからな!これは俺の為であって・・」




はいはい、ツンデレね。


確かにお前の為だろうよ。





「それよりお前なんか用だったんじゃないの?」

「あぁ!そうそう、アルの奴見なかったか?」

「アルフレッド?」

「アルフレッドさんがどうかされたのですか?」




きーくちゃん?

心なしか目が輝いてるように見えるんだけど?

いや、可愛いよ。

お兄さん今すぐ家に持って帰りたいくらい。

でもその輝き方・・。




「いや、今日の会議の事で事前に聞きたい事があったんだが約束の時間になっても来ないんだよな、」

「お二人で、そうですか・・。本当にお二人は仲がよろしいんですね。」





あー、菊ちゃん


笑顔がとっても輝いてるよ!

輝いてるよっ!

可愛いっっ!







「まぁ、そう言う事だから見かけたらアルの奴に言っといてくれるか?」

「もちろんです。任せてください」




アーサーはそのまま廊下を歩いて行った。


残ったのはアーサーを見つめてきらきらの笑顔を浮かべた菊ちゃん。


菊ちゃんの笑顔を見つめるお兄さん。


















「菊ちゃん、今度の新刊は?」

「もちろんアルアサR18禁本です」



にこっり笑顔を浮かべたままものすごい威力の言葉を投下した菊ちゃん。


でもその笑顔はやっぱり可愛い。


アーサーも不憫だよな。


菊ちゃんの事好きなのに1ミリも伝わって無いし。


まぁ、それはアルフレッドもか。


でも、お兄さんは敵が減るし別にかまわないけどね













「それでこれが下書き・・」





――バサッ








バッグの中から何か落ちた。




それは薄い肌色の多い本。








(フランシス受け触手R18禁―未開拓な身体を開花―)







表紙には無駄に露出している俺。







「きーくーちゃーん?」

「・・・なんでしょうか?」

「これ、何かなぁ?」

「夢と希望がたくさんつまった魔法の本ですっ!」





いや、そんなにやりきった!みたいな顔されてもお兄さん許さないよ!?


というかどうせならフラ菊にしてよ!!





「ハァ、いいよ。触手でも18禁でも菊ちゃんが好きなら。」

「え!本当ですか?」

「うん、だってそれを書いてる間は菊ちゃん、お兄さんの事だけ考えてくれてるんでしょ」





そう言うと菊ちゃんは面白いほどに真っ赤になった。



何この可愛い生き物!





「ねぇ菊ちゃん、大好きだよ」





耳まで真っ赤になる可愛い子。



これは脈ありってとらえていいのかな?











最愛の人が俺の手をとるまで、あと少し・・







END

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