短編

□好奇心旺盛な貴方
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アーサーさんの料理、食べてみたいです。






世界会議の休憩時間に事件は起こった。

元ヤン変態エロ紳士のアーサーが小さくて可愛くて物腰の柔らかい
天使のような菊ちゃんに好意を持っているのは誰の目から見ても明らかだった。
分かってないのは自分の事を爺だといいはる菊ちゃん本人くらいで。





「そ、そうか!本田が食べたいなら明日持ってきてやってもいいぞ!」

「本当ですか!」

「べ、別にお前の為じゃなく俺が作りたいのであって・・」

「はい!」


にっこりと笑顔で返事をする菊ちゃん。
その笑顔はとても可愛らしい。本人に言うと怒るので言えないが。




で、まぁ何が事件かというと

いやほとんどの人が察しがついてると思うけど、冒頭の菊ちゃんの言葉だ。








「き、菊?今、なんて?」

「フェ、フェリシアーノ君?どうかされましたか・・?顔色が良くないですよ?」


こてん、と首をかしげフェリシアーノを見上げるようにして聞く様は
とても、とても可愛いが言っている事が物騒すぎる。



何たってあの『殺人兵器』を自ら望んでいるんだからさ・・。



菊ちゃんは美食家で美味しいものにはとことん目がない。
その上好奇心も旺盛で、いやそんな所ももちろん可愛いんだけどさ。


でもアーサーの料理はなぁ・・・




「菊ちゃん、なんでいきなりアーサーの料理なの?」

「おかしいでしょうか?」

「ん〜・・。お腹すいたなら、お兄さんが美味しいご飯作ってあげるよ?」

「おいゴラ、髭全部ひっこ抜くぞ!!!」



フランシスさんの料理ですか!と目を輝かせる菊ちゃんは贔屓目なしでももちろん可愛い

そんな菊ちゃんを見ていると元ヤン海賊のアーサーが菊には俺が料理をふるまう、なんて言い出した。

空気読んで欲しいよね。




「何言ってんの、坊ちゃん。」

「そうだぞ!アーサーの料理は兵器なんだぞ!」

「兵器って何だよ!!!!」

「ヴェー、アーサーの料理は食べちゃダメだよ〜」

「そうやで、菊ちゃん!そんなん食べたら死んでまうって!」

「死なねぇよっ!!!!」


最初は強気だったアーサーもアルに言われた時点でちょっと涙目になっている。

正直気持ち悪い。うん、かなり気持ち悪い。



そんなアーサーを庇うように前に出たのは誰にでも優しい菊ちゃんで。





「みなさん!アーサーさんの料理は美味しいですよ?」


菊ちゃんの言葉は信じたいけどこればっかりは信じられない。

あいつの料理だけは美味しいなんて本当に思えない。

アーサーと菊ちゃん以外の者の心が一つになった。間違いない。



それでも菊ちゃんはアーサーの料理が美味しい事を必死に伝えようとしている。

その姿はすっごく微笑ましくて可愛らしい。
2人きりならうっかりベッドに引っ張り込みそうなくらい。




「菊は何でアーサーの料理が美味しいと思うんだい?」

アルフレッドの言葉に菊ちゃんはきょとん、とした顔で首をかしげた。

「何でアーサーさんの料理が不味いんですか?」



本当に分からない、という風に言う菊にアーサー以外の者は唖然としてしまっている。


アーサーの料理が不味いという事は殆どの者が食べてその不味さを経験しているか
その料理というなの汚物を見て視覚をやられているかで既に理解している。

菊ちゃんはアーサーと仲がいい、というかアーサーが菊ちゃんに付き纏っている。

坊ちゃんはあんなんだけど、まぁお互い仲良く(アーサーにしたらもう一歩恋人まで踏み込みたいんだろうけど)

友好関係を築いている。互いの家に行き来したりもしているみたいだし。




まぁ、そんな訳で菊ちゃんはあのアーサーの料理を食べた事があると思っていた。

いや、食べた事はないだろうけど見た事はあると思ってた。

だがどうやらそうではないらしい。






「アーサーさんは紳士ですよ?」

そんな方の料理が兵器な訳ありません。

そう言いきる菊ちゃん。


アーサーは感激して震えている。

やっぱり気持ち悪い。




だがひとつ言わせてほしい。

アーサーは紳士ではない。絶対に。

元ヤンで元海賊の上変態の奴は紳士と言えない。





「それにうちの肉じゃがはアーサーさん家の料理が元ですし。」

「えー!?肉じゃがってアーサーの料理が元になってるの?!」

「そうですよ、フェリシアーノくん」

「え、え、じゃあ肉じゃがってアーサーと菊の子どもって事?」





衝撃が走った。

もう雷が落ちたくらいの。いや正直落ちたわ。

菊ちゃん家の肉じゃががアーサーんとこのを元にしたって話は聞いた事あったけど

子どもという発想はなかった。でも確かに子どもとも言える訳で・・。





「あいやー!!菊が汚されたあるー!!!!」

「子、子どもか!!!せ、責任はとるからな!べ、別にお前の為じゃなくてこれは紳士として当然のことだからな!」

「あへん!てめー、許さねぇあへん!!!!!」


激怒している王と変にツンデレしながらも全身で喜んでいるアーサー。


あれ・・?でもその道理で言うとさ・・?





「それならナポリタンはロヴィーノと菊ちゃんの子どもやんなぁー」

羨ましいわぁー、とのほほ〜んとした言葉で爆弾を投下したアントーニョ。


「えー!兄ちゃんずるい!」

「何言ってんだ、バカ弟!でも菊、俺責任とるからな。絶対幸せにするから」

「ロ、ロヴィーノくん」



イタリア男の本領発揮とばかりに甘いマスク+甘いヴォイスを使うロヴィーノ。

菊ちゃんは恥ずかしそうに少し頬を赤くしている。

あぁ、可愛いねー。





「俺も菊との子どもが欲しいんだぞ!」

「ヴェー、俺も欲しい」

「・・菊・・俺も、欲しい・・」

「貴様チーズは好きであったな?」

「菊はにーにの料理が一番あるね!」

「それやったら親分も菊ちゃんと子ども作りたいわぁ」

「何言ってんだ!バカ!菊の子どもはナポリタンがいるだろコノヤロー!」

「菊の恋人は俺なんだからな!!バカァ!!!」


はーい、もう収拾不可能です。

ついでに坊ちゃんは菊ちゃんと付き合ってないでしょ。

妄想と現実の区別くらいつけようね。




てかお兄さんの手には負えませぇ〜ん。

もう会議の休憩時間はとっくに終わってんだよね。

というか、もう会議自体終わっててもいい時間だよね。



ハァ、もうやだ、こいつら。









「あの、フランシスさん」

俺のスーツの端を引っ張りながら呼ぶのは話題の中心である菊ちゃん。


「菊ちゃん、どうしたの?」

「すみません、この状況が良く分からないのですが・・」

「あー・・・それはお兄さんも分かんないね。」


騒ぎはいつのまにかイヴァンの参加もありさらに大きくなっていた。
もう、ほんとヤダ。





「あー・・菊ちゃん?」

「はい」

「もうこいつらほっといて一緒にご飯でもどう?」

「でも・・、いいんですかねぇ・・?」

「まぁ、いいんじゃないの。あいつらはまだ、終わりそうにないしさ。」





それに久し振りに会えたんだから、ね。


「そうですね」



苦笑する菊ちゃんの手を取って会議屋を出た。

菊ちゃんの手をしっかり握って手配してあった車で自分の家を目指す。

会議の開催地がフランスで良かった。






あ、もちろんお兄さん特製のフルコースをふるまったよ。


もう菊ちゃんが可愛いくて可愛くてしかたないね。





食後は二人で・・。


え?無理矢理じゃないよ。


合意の上だって。


だって俺たち、恋人同士だもんね。






END

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