短編
□優しく積もる淡い恋
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それは優しく積もっていった。
まるで夜雪のように静かに、でも確かに。
話をする機会は多くはなかったが、それでも私は彼に惹かれていった。
何で、と問われると困るのだが。
まるでそれが当たり前のように、彼を目で追っていた。
彼の見せる表情は、一つひとつが新鮮だった。
怒った顔も、難しそうに眉を寄せているもの、苦笑いも照れて声を張り上げた後の笑顔も。
とっても、とっても輝いて見えて。
私なんかが触れたら、輝きを失ってしまうのではないかと思うと、見ているだけで
ただ、遠くからでも貴方を見ていられる事が嬉しくて仕方なかった。
「菊、こっちみろよ」
でも、私はどうしようもなく貪欲で。
きらきらな貴方を見ているだけで幸せだと思っていたのに。
隣にいるのが、私でなくても。
いいえ、彼の隣にいるのは私ではないと分かっているのに。
手を伸ばしてしまう自分が浅ましい。
「菊、俺をみろよ・・。頼むから。」
絞り出したような声
そして不意に訪れた右手の温もりに、ゆっくりと顔をあげると。
そこには今まで一度も見たことない
耳まで真っ赤になったロヴィーノ君がいた。
(ジジイ、いっつも俺の事見過ぎだ!コノヤロー!)
(も、申し訳ありません!不愉快になられたでしょ?・・すみません)
(ちげぇよ!!どうせなら・・・、傍に来いよな・・。)
END