短編

□僕の隣に君がいる
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大好きだなんて、そんな陳腐な言葉

愛しているだなんて、そんな使い古された言葉



必死だった




必死だった












「アルフレッドさん、見てください」


君は美しくて


「雪ですよ」


優しくて


「道理で寒いわけですね」


みんなに人気だから


「アルフレッドさん?どうかしましたか?」

「菊・・・っ」







菊を守ることに必死だった

必死に守っているつもりだった

不安だった

だって、君はとても人気だから

いつか俺のもとからいなくなってしまうんじゃないかって



「体調でも、悪いんですか?」



俺は、子どもで

どうしたらいいか

一番大切なものは何か

そんな簡単なことすらも忘れてしまっていて



菊を

守りたかったはずの菊を大切にできてなかった










――――――



『アルフレッドさん、あれはなんですか?』

『……。』

『…アルフレッドさん』






『アルフレッドさん!あの、この前の約束の事なんですけど』

『菊、』

『やはり待ち合わせ時間を1時にしませんか?』

『悪いんだけど、その日の約束今度に変更してほしいんだぞ』

『え・・、あ、そうでしたか。分かりました』






『あ、もしもし。本田です。すみません、少しいいですか?』

『あぁ、菊かい?悪いんだけどこれから用があるんだ』



――――――――






菊を取られないように

菊にずっと一緒にいてほしいから

菊とずっと一緒にいたいから









『菊ちゃん』
『フランシスさん』

『本田』
『アーサーさん』

『きーくっ』
『じじい』
『フェリシアーノ君、ロヴィーノ君』

『本田』
『菊』
『ルートヴィッヒさん、ギルベルトさん』

『菊』
『耀さん』



菊は人気で、みんなが菊を気に入っているから

俺は一人、不安で仕方なかった













いつからだろう

菊が、俺に疑問をぶつけてこなくなったのは


いつから

菊は、あんなに笑うようになったんだろう


菊、菊、菊、菊……








「…ん、アルフレッドさん、アルフレッドさん!」

「き、く……?」

「本当に体調でも悪いんですか?」





下から見上げる形で菊は立ち止まった俺の手を握りながらそう言った。

眉をギュッと寄せて。

心配してくれている




「ちょっと待ってくださいね、今タクシー呼びますから」

「菊っ」

「…っ、アル、フレッドさん…?」



携帯を取り出して耳に当てていた菊を抱きしめた

しっかりと、強く




「ど、どうしたんですか?」



どうもしない

なんでもない

泣いてなんかないんだぞ

ヒーローは泣かないんだ




菊、俺は菊が大好きなんだ







君のどんな質問にも答える

君を笑顔にできるなら何でもする

君を幸せにしたい

俺が、菊を幸せにする








「ごめん、大好き」


菊、いつても君は俺を待っていてくれた


「アルフレッドさん、私も、です」


次は一緒に、手をつないで


「もう、離さないんだぞ」


「はい」






俺の隣には、笑顔の君が




END

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