短編

□好きで、大好きだから
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「アントーニョさん、私と・・・、別れてください」













あなたが私だけを見てくれない事を、悲しいと思ってしまったのはいつだったのでしょうか

こんな醜い、生々しい感情が自分の中にもまだあったのだと気付いたのはいつだったのか

あなたの笑顔は

あなたの声は

あなたの腕は

あなたのすべては私だけのものにはならない




そんな事は解りきっているのに










「な・・、どうして、なん・・・?」




あなたが可愛がるロヴィーノ君とフェリシアーノ君に嫉妬心を抱いてしまったのはいつでしょうか

お二人とも、私にとってとても大切な、大切な友人なのに




「ごめん、なさい。」




あなたの友人の、フランシスさんとギルベルトさん

とても仲がいい事は知っています。

幼いころから今まで悪友として楽しい時間を過ごしていたことも聞きました。

だから込み入った話もするんでしょうし、誰かに何かあれば心配するのは当然の事なのに

わたしは、そんな事にすら感情が荒立ちそうになってしまう




「私が、悪いんです。アントーニョさんは悪くないんです。でも、私が、もう・・・、ダメなんです・・。」




アントーニョさんは優しい

楽しいお話をたくさんしてくれる

一緒にいるとこちらまで楽しくさせてくれる


仲が悪いというアーサーさんとも何だかんだで仲がいい

アルフレッドさんや蘭さんとも、本当は仲がいいんだと思う


それはとても素晴らしい事だ

アントーニョさんは優しくて良い人なんだから、誰かから嫌われるなんてそんなのいけない




分かっている

アントーニョさんが笑ってくれていたら私も嬉しかったのに




「菊ちゃん、どうしたん・・。もう、ほんまに無理なんか・・?」




アントーニョさんが本当に好き

こんなに好きなのにそれを上手に表せないのが悔しい

素直に表現できない自分がもどかしい


何より、醜い感情をアントーニョさんに晒して軽蔑されるのが怖い




「もう、終わりなんです。もう、ダメなんですよ」




軽蔑されるのが

面倒だと思われるのが

うっとおしいと思われるのが

重いと思われるのが

愛想を尽かされるのが




私はすごく、怖いんです




こんな感情知らない


自分には、もうないと思っていた独占欲

私には、アントーニョさんを縛る価値なんてないのに




「私、あなたのことが本当に好きでしたよ」




今も好きです、なんて言えないから

せめて伝えたいんです

臆病でごめんなさい

こんな感情を持ってごめんなさい






でも、好きだからこそあなたを縛りたくないんです

好きだからこそ、あなたには笑っていてほしいのです

あなたのことが大好きだからこそ、私がそばにいる事が出来ないのです。




「ごめんなさい、大好きでした」




あなたの泣き顔なんて見たくなかったのに







やっぱり私は貴方にふさわしくなかったんですね







END

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