宝
□『志したのは…』
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実習の帰りに見つけた焼け跡は、まだ真新しいものだった。
戦に巻き込まれた村は、もはや見る影もない。
人々が泣き、笑い、生きていた場所は、ただの炭と灰の集まりと化していた。
「ひでぇ事しやがる…」
人の気配は既にない。
かつては家だったであろう瓦礫の前で、
俺の脳裏に浮かぶのは、父と母、学園の後輩、そして守りたい者の、
笑顔だった。
世の中から戦をなくしたくて忍者になろうと誓ったが、
鍛錬を積めば積むほど己の弱さに気付かされ、
世間を知れば知るほど自身の小ささを思い知らされた。
まだだ…まだ足りない…!
強く拳を握りしめ『もっと強くならなければ』と心に誓う。
そして、もう何も残っていない村に背を向けて、俺は歩き出した。
何もしてやれなくて、すまない。
そして、
決意を思い出させてくれて、ありがとう。
そう、小さく呟いて…。
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