FF6短篇小説

□隣の芝生が青く見えた
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大したことは無い。


ただちょっと、羨ましいと思ってしまう事は


誰にでもある事だから。


◇隣の芝生が青く見えた◇



最近、ティナはとても綺麗になった。そう言いだしたのは誰だったか。確かに綺麗になった。外見とか服装などではなく、もっと内面的なモノだと思った。

『セリス、これはどうやってつけるの?』
ティナの呼ぶ声ではっとする。コレとよばれたものは金の髪飾りだった。
今日は情報収集と休憩を兼ねて、ツェンで自由行動となった。
私はほんの5分程前に目覚め、ティナは既に出掛ける支度をしていた。
『…ちょっと貸して?ティナにつけてあげる』
鏡を前にずっと手に持っていた髪飾りを見ていたティナに声を掛けた。
少し躊躇したものの、ティナはおねがいします、と言って手渡してくれた。余程他人に触らせたくなかったのだろうか。髪飾りを鏡越しにじっと見ている。

『とても綺麗な髪飾りね。貰ったの?』
そう尋ねてみると、ティナは頬を染めて小さな声でうん、と言った。
リルムやセッツァーが二人のことを反対していたけれど、意外にもカイエンやシャドウ、ストラゴスは賛成していた。

『エドガーの事、好き?』
躊躇ったものの、聞いてみる。感情に乏しい彼女に極端な質問は避けていたのに。案の定、『わからない』と彼女は言った。しかし続けて、『エドガーと居ると楽しいし、一緒に居たいと思う。』とも言った。

私はどうだろう。ふと思った。ロックからプレゼントだって貰うけれど、最後に貰ったのはいつだっただろうか。
それに、貰う物は綺麗だとは思うが加工前の宝石だったり、木で作った小さな置物が大半を占めている。
エドガーの様に女性が気に入りそうなプレゼントをくれたって良いのに。
それに、ケフカの暴走を止めなくてはならないというのに、私たちだけが浮かれるわけにもいかず、周囲を気にしてしまってデートらしいデートもできない。
挙げ句、暇さえあれば次の宝探しの情報収集。

エドガーに愛されている、と、はた目からも分かるティナの事を、羨ましいと思ってしまう自分はさもしい人間なのかも知れない。
『セリスはロックの事が好き?』
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