FF6短篇小説

□隣の芝生が青く見えた
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『え?』
突然の質問に黙ってしまった。
分からない。はっきりと答えられず、まぁ…、と曖昧に流してしまった。
自分も考えていたことだけに、尋ねられた時はこの娘は人の心が読めるのではないかと思えてならない。
『セリスはロックと居て楽しい?もっと一緒に居たいと思う?』
『…どうかしら…。考えた事なかったわ。』

そう、そんなに簡単に物事を考えられずに、藻掻き苦しむ自分に気付いてしまった。

私は本当にロックの事を好きなの…?

この話題を終わりにしたいと思ったところに、タイミング良く軽く扉を叩く音が聞こえた。
『失礼するよ、ティナに用事があるんだが…』
頬笑みを絶やす事無くエドガーが部屋に入ってきた。
『エドガー、セリスにつけてもらったの。』
ティナは嬉しそうにエドガーに近づいていった。
エドガーは女性には紳士的で優しいけれど、ティナには殊更優しいと思う。時々それがとても羨ましくて、けれどもロックがエドガーの様な紳士的な態度は似合わない、とセリスは思った。
『セリス、私たち出掛けるね。』
エドガーの腕をしっかりと掴んで、部屋を出ていった。私は誰も居ない部屋で小さなため息を吐くと、窓辺から出掛ける二人を見送った。
とりあえず着替えよう。
着替えながら、ティナの言葉が頭の中を駆け巡っていた。

「エドガーと居ると楽しいし、一緒に居たいと思う。」

私…どうして難しく考えていたんだろう…。もっと簡単な事だったのに…。

着替えを終えて、今度は大きなため息を吐いて、ベッドに身を投げ出した時だった。
『セリス〜!!』

窓の外から聞こえる叫び声に、呆れながら返事をした。
『何?ロック。』
ロックは気付いていないのか、見せたいものがある。と言って急かしてきた。

それを少しの間眺め、窓の桟に足を掛けた。

『ちゃんと受けとめてね!』
窓から飛び降り、ロックに向かって手を伸ばした。
『おい!危ないって!!』

ロックのどこが良いとか悪いとか

他人と比べたりとか

難しく考え過ぎていた。

私はロックと同じ世界を見たくて、一緒に居たいと思ったんだ。

あなたと一緒だと、全てが輝いて見えるから。

しっかりと抱き留めてくれたロックに、小さな声で好きと囁いた。


END
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