◆S.S.
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今日は久し振りに明彦とランチをしに外へ出掛けた。
その後はショッピングをして寮には夜戻るつもりであったが、予想外に時間が余ってしまい、私達はポートアイランド駅の映画館へと足を運ぶ。
特に見たいというものもなく、都合良く上映される洋画の恋愛映画を見る事にした。
内容は至って在り来たりなもの。
ヒロインが困っているところに男性が現れ、色々な問題を乗り越えながら恋に落ちてハッピーエンドを向かえる。
だが、私はあるシーンでふと考え込んでしまった。
洋画の恋愛映画では、大概入っていると思われるベッドシーン。
愛し合う男女がお互いの愛を確かめ合う行為。
愛し合っていれば自然な行為。
…では、私と明彦は?
付き合い始めてから随分と立つ。
私は明彦の事を愛している。
一番大切な人で、命に換えても守りたい人。
だから、明彦となら体を重ねたいとも思う。
しかし、明彦からはそういった素振りは全然見られない。
…私はそこまで明彦に思われていないのだろうか…‥?
* * *
―コンコン
部屋の中にノック音が響き私はドアを開けると、そこには心配そうな顔をした明彦が立っていた。
「明彦…。どうかしたのか?」
「それはこっちの台詞だよ。美鶴こそ何かあったのか?映画の帰りから様子がおかしかっただろ?」
図星を突かれて思わず体がびくっと震える。
「美鶴?」
「…話がある…‥」
私は明彦を部屋の中に招き入れた。
ソファを勧め、私も明彦の隣に腰掛ける。
「話って?」
「明彦は…、私と付き合っていて、今の状態で満足しているのか?」
「はっ?」
突然の質問に明彦は間抜けな声を上げた。
何を意図としているのか、わかるはずがないので無理もないが…。
「今までは、明彦と手を繋いで、抱き締め合って、キスをして、言葉がなくても心で繋がっている…、そういった行為がすごく嬉しくて幸せに感じていた…。でも、今日の映画を見て、何か足りない気がした…」
そう言って私は明彦の胸に顔を埋めると、彼の腕が私の体をそっと包み込む。
「私は…、明彦の事を愛してる…。だからもっと『繋がり』が欲しい…」
私の気持ちを理解してくれるだろうか?
明彦の思いはどうなのだろうか?
不安に思っていると体に回されていた明彦の腕に力が入り、力強く抱き締められる。
「俺だって、美鶴と同じ気持ちだよ…。でも今以上の関係になったら、何かが変わってしまったり、何かを失うかもしれないと不安だったんだ…」
「明彦…。私は大丈夫だから…、明彦と一つになりたい…」
「美鶴…」
お互い見つめ合って、ゆっくりと顔を近付け唇を重ねる。
そのまま私はソファの上に寝かされた。
次第に体は熱を帯び、溶けていくような感覚に身を委ねる。
明彦の愛を受入れる事が嬉しくて、とても幸せに感じた…。