◆Novel

□dreieck
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寮に帰る途中、明彦は好物の牛丼を買っていこうと、巌戸台駅の商店街へと足を向けた。

行き交う人を何気なく横目で見ていると、目の端で遠くに映る一組のカップルに視線を止める。

目に映るシルエットに見覚えがあるようで、何だか気になって目を凝らして見ると、箕嵩と美鶴が一緒に歩いていた。

珍しい組み合わせだなと、その時はそう思い、そのまま海牛へと明彦は足早に向かった。

***

その日の夜―

今日は体調不良のメンバーも居る事から、タルタロスへ向かうのは止めて各自思い思いの時間を過ごす事となった。

体調が悪い者は自室で休んでいるが、明日は日曜日という事もあり、夜だというのに出掛けているメンバーも数名いる。

いつもはみんなが集まるラウンジも、今は明彦と美鶴の二人しか居ない。

そんな中明彦は、読書をしている美鶴に声を掛けた。

「美鶴」

「何だ、明彦?」

余程本の内容に没頭しているのか、美鶴は本から目を離す事なく返答する。

「明日の日曜日、久し振りに映画でも行かないか?」

「済まない、用事がある」

明彦の誘いの言葉に、美鶴は本から少しだけ顔を上げ、ちらりと彼を見るだけでそっけなく答えた。

そんな美鶴の態度が少し気になったものの、用事があるのなら仕方がないと、強く出るわけにもいかず、

「そうか…」

と、呟くだけで明彦は大人しく引き下がったのだった。
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