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□そばに
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知っていた。
ツナが俺を巻き込みたくないと思っていることを。
だから俺は知らないフリをしていた。
マフィアごっこだと思ってるフリをしていた。
それをツナが望んでいたから。
でも、知ってたよ。
それがごっとなんて遊びじゃなくて現実で。
本気で殺し合いをしていて。
優しいお前がマフィアのボスになるってこと。
でも俺は構わなかった。
だって、お前はお前だろ?
マフィアのボスだろうとなんだろうと、俺にとってツナはツナだ。
お前は俺をマフィアになんてしたくないと思っているのも知ってる。
でも、俺はお前を選ぶ。
野球は大好きだし、できれば続けたい。
プロになるのが夢だった、
でも、それを理由にツナを失うわけにはいかなかった。
多分、俺が野球でプロになれば、ツナは喜ぶ。
まるで自分の事のように喜んでくれるだろう。
でもそれじゃあ駄目だ。
プロ野球選手とマフィアのボス。
そうなればツナは二度と俺とは会ってくれないだろう。
何よりも、俺への世間体を気にしてくれるだろう。
そんなの俺は望んじゃいない。
お前の傍にいたい。









「野球は高校までって決めてたよ」
「ど、どうしてっ!?駄目だよ!山本はプロになれるんだから!」

ツナがイタリアに行くって言い出した。
だから俺も連れてけって言った。
そしたら駄目だって言う。
野球するんだろう?って。
でもツナ、俺は野球は高校までって決めてたよ。
お前と一緒に居たいと思ったときから。

「草野球でもバッティングセンターでもいいよ、野球は」
「でもっ」
「でも、イタリアについていかないと、ツナとはもう会えなくなるだろ」
「っ」

ほら、言葉に詰まる。
そのつもりだったんだろう?
そんなの許さない。

「そうだな、じゃあ毎年ボスの権限でボンゴレ野球大会でも開いてくれよ」

俺はそれでいいよ、と笑いかけてやる。
ツナは今にも泣きそうな顔をしていた。





















「…なんだよ」
「ワォ、僕に気付いてたんだね」
「今ならどこから来ても多分分かるぜ」

ピチャンと水の落ちる音がした。
背後から近づいてきた雲雀に振り向きもせずに声をかける。
心底楽しそうな声で雲雀を返してきた。
ピチャンとまた音がする。
始めて人を斬ってから、随分たった。
気持ちいいわけではないが、たいして思うこともない。
全部ツナの敵だと思えばやって当然?って感じで。

「…しかし、並盛大好きな雲雀がイタリア来るとは思わなかったのな」
「ふん。僕にだって選ぶ権利があるんだよ。なのにあの子、最初から行くって言う選択しださなかったから」
「…え、そんだけ?」
「まぁ後は、僕はあの子の守護者だからね。強いけど弱いあの子を守ってあげないと」

この世界で雲雀にこんなこといわせられんのはツナだけだと思う。
ツナは誰よりも強いけど、誰よりも優しいから、誰よりも弱い。
だから守ってあげたくなるんだ。
世間一般的に言えば外れた道だと思う。
生と死の境を彷徨う人生なんてそう送るものじゃない。
でも、俺はこの人生をはずれだとは思わない。

「お前らぁ!帰るぞ!俺は極限腹が減ったぞぉ!!」
「この光景見て腹が減ったって…駄目だこの人色んな意味で」
「クフフ…でも確かに小腹がすきましたね」
「たくっ。おい!早くしろ!10代目がお待ちだ!」

笹川先輩は相変わらず極限が口癖で熱い人だ。
でも昔よりは大人になった、当たり前か。
ランボは昔のように泣きじゃくる事はなくなったし、対応が大人しくなった。
骸はツナのお陰であそこを出て、マフィア殲滅のついでです。とか言いながらツナにしたがっている。
獄寺は…相変わらず獄寺だ。
今じゃ立派な右腕としてツナを支えているが、ツナへの異常な敬愛っぷりは変わらない。
やれやれと言った風にため息をついていく雲雀は、今も群れは嫌いだ。
でも、守護者達の集まりにはあまり嫌そうな顔をしなくなった。
骸とも時々訓練しているらしい。
手加減が必要なくて楽だって言ってたな。
俺はどうだろう。
代わったとよく言われるが、そんなつもりはない。
俺は元からこんなんだった。
隠していただけ。
雲雀と骸には漸く脱いだのかと面白そうに言われた。

「山本!置いてくぞ!」
「おいおいそりゃねーよ獄寺〜」

俺が変わったのはツナが俺を見てくれるようになってから。
ツナがいて、俺は変わった。

「皆!怪我とかしてないっ!?」

駆け寄ってくるツナ。
獄寺が合わせて駆け寄っていく。
10代目こそお怪我ありませんかー!!とか言いながら。
10年前から変わらない光景だ。
心配要りませんよ、って骸がさりげなくツナの頭を撫でる。
いらん心配だ!と笹川先輩。
ボンゴレは車で待ってればいいんですよ、とランボ。
ボス、一人で行ったら危ない…とクロームがツナがきた方から小走りで来た。
心配性だね君は、と雲雀がツナの前で呆れたようにため息をつく。

「山本!山本は平気!?」
「おう、余裕」

にこっと笑って見せれば、ツナは安心したように微笑んでくれた。
何年たっても、お前は変わらないな。
これからだって、お前の笑顔は俺が、俺達が守るからな。


END


今はまっているのです。

11.3/13

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