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□歯医者
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歯医者に行きたくないって銀ちゃんが駄々をこねている。
情けない大人ネ、と私はため息をついた。
なんでも、前行った歯医者でエライ目にあったらしい。
確かに、銀ちゃんは歯医者に行ったはずなのに全然治ってない。
私はてっきり、歯医者が嫌で敵前逃亡したものだと思っていた。

「嫌だ、ぜってーいきたくねぇ。大体口の中にドリルいれんだぞ一番入れたらダメだろドリルなんて」
「はいはい」
「はいはいじゃねーよ。お前、大体あれだよ?口の中なんて自分の手だってそういれねーのに他人の手が入るってマジおかしくね?おかしいよなコレ」
「もー、いい加減諦めてくださいよ。ずっと痛いよりマシでしょ?歯をドリルで削られるくらいなんですか。いつもおなかに穴あけたりしてるじゃないですか」

あー無理、無理無理。定春にモフモフしてぇ!!と喚いているが、定春は銀ちゃんが来たら噛む気満々だ。
新八と顔を見合わせてため息をついた。
この駄目な大人は本当にどうしようもない。

「僕も神楽ちゃんも一緒に行ってあげますから」
「待合室で待つ時には手つないでてやるネ」
「…」
「治療終わるまでちゃんと待合室で待っててあげますから」
「なんだったら歯医者までの道のりも手握って行ってあげるネ」

ほら行くヨ、行きましょう?と声をかけると神妙な顔でうなづいた。
左手を新八と右手を私とつないで万事屋を出る。
定春には留守番を頼んだ。
あら仲良しね〜なんて言っている人がいるがそれどころじゃないアル。
近づくにつれて足が遅くなる銀ちゃんを引きずるようにして連れて行った。
待合室でも銀ちゃんは尋常じゃない汗を流している。
大丈夫ですか?と心配そうな新八にこくりとうなずくだけだ。
待合室で結局銀ちゃんは一言も言葉を発さなかった。
坂田さん。と呼ばれるとびくりとなった。
ダラダラ汗を流している銀ちゃんを二人でぎりぎりまで連れて行ってあげる。

「い、いってくる」
「おうヨ」
「がんばってくださいね」

そろりと手を放した。
心配だ。
泣かないだろうか。
銀ちゃんがあんなに怖がるんだ、きっと歯医者というのはとんでもないものアル。
静かな待合室で私までドキドキしてきたアル。
治療室からは銀ちゃんの呻き声も泣き声もしない。

「新八ィ、銀ちゃん大丈夫アルか?」
「大丈夫だよ。この歯医者さん上手だって有名だから」

ちゃんと調べたから大丈夫、と新八が笑う。
じゃあきっと大丈夫ネ。
ほっとした。
暫くして、銀ちゃんが出てきた。
治療室に入って行った時よりマシな顔をしている。
嘘みたいにかいていた汗も治まっているようだ。

「銀ちゃん、平気そうネ」
「そんなに痛くなかったでしょ?」
「…おう」

若干まだ無理そうだけど、この際目を瞑るネ。
坂田さん、と受付に呼ばれて新八が返事をした。
会計と次の予定を決めているようだ。
帰るぞー。と銀ちゃんがブーツをはいている。
ありがとうございました。と新八が頭を下げて、受付の女がお大事にと笑った。
歯医者から出て、さて帰ろうとした私たちの手を銀ちゃんがつなぐ。

「…銀ちゃん?」
「銀さん、もう帰るだけなんですけど」
「バカヤロー、銀さんご褒美もなしにがんばれるほど人間できてねーぞ」
「自分で言わないで下さいよ」

しょうがないですねぇ、と新八は手をつないだまま歩きだす。
だから私も、銀ちゃんはお子ちゃまネ、と行って歩き出した。
銀ちゃんはなんかぶつぶつ言っていたけどそんなの知らないネ。




それにしても手をつなぐ、が銀ちゃんにとってご褒美になるなんて。
なんだか少しくすぐったい気がするアル。


END


結局は歯は治ったのか?ということで…。
ちょっと話題は古いけど捺樹そんなの気にしない!!

10.6/6
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