苔緑色
□Case:one
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「お。寝たか?」
すやすやと眠る兄妹を見て、セドリックは微笑んだ。
いくら背伸びしていてもまだ子供だ。
二人ぴったり寄り添って、椅子に座ったまま寝てしまっている。
あれほどまで頑なにルーフィルを信用しなかったのに、ルーフィルの瞳を見てあっさりと折れたときは、当然だと思った。
あの強い瞳に自分も惚れたのだ。
あれを見ても、信用できないと言える人間がいるのなら見てみたい、とセドリックは思う。
「ふふ。可愛い。」
眠る二人に毛布をかけてやりながら、ルーフィルは微笑んだ。
そのふわりとした笑顔を見て、セドリックの胸はどきりと高鳴った。
やばい。
可愛い。
その単語が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
すぐにでも抱きしめたい衝動にかられるが、そんなことをしたら半殺しにされるのでぐっと我慢した。
「ね。セドリック。」
「んあ?」
自分の理性と欲望が戦争の如く争っていたため、セドリックの返事は間抜けな声になってしまった。
「兄妹っていいね。」
ぽつん、とルーフィルが呟くように言った。
どこか哀愁を帯びていて、不謹慎だがどこか色っぽいと感じてしまう。
グレイの瞳は遥か遠くの誰かを見ているようだった。
ああ、また思い出しているのか。
そう気付いたセドリックは、半殺しを覚悟の上でルーフィルを自分の腕へとおさめた。