とある科学の空想現実
□其一〜始まりは夏休みから〜
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序章――空想と幻想殺し――
七月十九日の夜。学園都市。
夏休みも間近に迫ったその日。二人の少年は走りに走っていた。
「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「叫ぶ暇があったら走りなよ…っと、前方から不良の増援三。そこの角、曲がるよ」
叫んだ黒髪黒目の普通体型の少年…上条は、冷静に状況を伝えた銀髪赤目の小柄な少年の言う通りに動いた。
二人が走っている理由。それはもちろん、会話の中にもあったように不良に追われているからだ。
二人は夏休み前で浮かれていた。何と無く豪華に飯でも食うかと入ったファミレスで不良にかつあげされかけていた少女を見て、何と無く助けようとしたのが間違いだった。
多数でトイレに行くのは女子の特権だと思った二人の男の憐れな末路だろうか。
二人は逃走を開始し、不良の体力を奪う作戦に出たのだ。
「あーもー不幸だ不幸過ぎますー!」
「煩い当麻!…撒いたかな?」
小柄な少年の声に、上条は安堵のため息を吐く。
「やれやれ…当麻、君ってやっぱ不幸だね」
「言うな、分かってる」
はぁ、とため息を吐いた上条に、苦笑を漏らす少年―小柄な体型に銀髪と赤目を備えた、機械めいた美形だった―、神代 絶牙は、しかし何かの気配に気付いた。
「…やれやれもう追いついたのかい?超電磁砲。もしかして途中で不良をビリビリさせちゃったのかい?」
「うっさいわね空想現実(イメージリアリティ)。今日こそあんたら二人をぶっつぶす!」
結論から言うと、二人は少女を助けようとはしていなかった。
二人が助けようとしていたのは、不良の方だったのだから。