古泉&キョン

□童話 【人魚姫・キョン】
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「キョンくん、桃が流れちゃうよ。」

昔々、ある所に、『キョン』という
少年が居ました。
キョンは、一人の妹と住んでいて、
芝刈りや洗濯は、
全部自分でこなしていました。
妹を連れて、川へ洗濯へ行っていた
キョンは、目の前を桃が流れていく
景色に唖然としていました。

「…知らん。」

そこまで俺は優しくない、といいながら、
キョンは洗濯を続けました。

「助けてくださぃ…。」
「…ちょっと!!開けなさいよ!!」
「……。」

桃の中からは、三人の少女の
声が聴こえます。
そのうちの一人の声に、キョンの心は
揺れ動きましたが、結局、
桃が流れていくのを見るだけでした…。



「…はっ!!」

俺は目を開けた。

「…夢か…ってん!?」

目の前は青い世界。
まるで、『海』。

「…どうしたのよ!大声張り上げて!」

声を張り上げているのはお前だ。

見ると、ハルヒが胸にホタテらしき
貝類の貝殻を付け、足は
魚のうろこに包まれている。

「…どうしたんだ?そのコスプレは。」

ハルヒはにやりと不適な笑みを浮かべ、

「何よ、今更。」

といった。

いつでもまあ冷静に対処してきた俺が、
ここまで頭を悩ませているのだ。
『今更』なんて言葉で片付けるな。
それとも、俺ももう寿命か?

「…そろそろ、嵐がくるみたいよ。
 アンタも準備しておきなさい!」

ばしん、と頭を叩かれ、うっすら
涙を浮かべる俺。
今気づいたが、俺も人魚のコスプレだ。

「う……」

体中の血が引ける気がした。

「うわあああああっ!!!」

どこかの主人公みたいな素っ頓狂な
雄たけびをあげ、俺は呆然と立ち尽くした。

「…どうしたんですか?キョン君…」

ふと横を見ると、ウサギの耳がついた
朝比奈さんが立っていた。
人魚の格好…なのにウサギって。

「…い…いえ…」

そうだ、海苔を食べよう。

光のない目で海苔を探す。

「キョ…キョン君!?
 どうしたの!?」

もはや笑うしかない俺に、
おどおど声をかける朝比奈さん。

これはこれで画になる。

なんてことは考えないで、
とりあえず、これが夢かどうかって話だ。

そして、古泉は?

長門は説明していなかったが、
俺の視線のずっと先で読書中だ。

  

  
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