企画小説
□愚者の楽園
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※鬼畜注意。性描写があります。18歳未満の方、苦手な方はご遠慮下さい。
人は、俺達二人を刹那的だと言う。
事実その通りだ。
楽しそうな事を見かければ首を突っ込みたくなるし、野次馬を見かければいそいそと人垣に向かう。
後のことなんて考えない。
ただその時、その瞬間、自分のしたいようにするだけの話だ。
今だってそう。
「ここ、人通り多い……!」
「だからいいんじゃん。」
「見つかるか見つからないかのスリル!が楽しみたいんだよ俺は。」
「スリルって……!もし見つかったらどうするんだよ!?」
「その時はその時で考えればいい。」
「っの、馬鹿ッ!!!」
「似たもの同士の癖して何言ってんだか。」
ごそごそと服を弄る音。
小声での口論。
ぎゅっと手首を掴んで固定すると、翡翠の瞳が鋭くこちらを睨みつけてきた。
そこらをふらふらと歩いていたヨハンを見つけたものだから、一、二の三で引っさらって逃亡。
早速物置に連行して、暴れるヨハンを壁に押さえつけて事に及ぼうとしてる。
十中八九、終わった後で怒られる。
そこまでわかっているというのに、俺の頭の中は目先の楽しみで一杯だった。
「何考えてんだよ、こんな所でッ!」
「なんにも考えてないけど?」
「だろうな!ああそうだと思った!」
ぎゃんぎゃん喚きながら、ヨハンは長い足を蹴り上げた。
強烈な蹴りを上手くかわし、両腿の間に方膝をねじ込む。
次いで必死に胸板を押し返してくる両手首をベルトで締め上げれば、ヨハンは正に手も足も出せない状態となった。
「はい、俺の勝ち。」
「ぅぅ……。」
悔しそうに睨みつけてくるものの、肩はびくびくと恐怖に跳ね上がり、早くも瞳は潤み始めている。
期待通りの反応を示してくれる恋人に感謝感激。
「あ…あの、さ!」
細い胴に捲いてあるベルトを外そうとすると、ヨハンはあたふたと口を開いた。
徐々に開かれていく下腹部から目を逸らしながら、努めて明るい声を作ってぎこちなく笑う。
「せめて部屋にしないか?ここ、その、狭いし…。」
口調だけは宥めるように、しかし言葉には精一杯の願いを込めて、ヨハンは目を泳がせる。
頬を紅潮させた上でのその所作はより俺を煽ることとなってしまったのだが、逃げることに必死の彼が気付くはずもなかった。