企画小説
□テディ・ベアは悪魔の笑みを。
1ページ/7ページ
※性描写がありますので、18歳未満の方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方はどうぞ!
「……これ。」
帰って早々、不機嫌な声が耳朶を打った。
次いで無遠慮に伸びてきた指が、机の上に置かれていたものをちょいと吊し上げる。
タグ付きの小型なそれは、繊細な指先の上でつぶらな瞳をきらりと輝かせる。
クリーム色の小さなテディベアと見つめ合い、十代はかすかに目を細めた。
「大学の友達がくれたんだよ。クレーンゲームで取り過ぎたからやるーってさ。」
しげしげと見遣る十代をしり目に、もう一つのテディベアを持ち上げては肩肘を突く。
つんと鼻先を上げたそれは、俺に向かって可愛らしく微笑みかけた。
大学の友人たちから11個の色違いのテディベアのキーホルダーを貰ったのは、今日の昼下がり、家路に着こうとした、まさにその時だった。
「妹にやろうとして取り過ぎた。」……
と口々に言った彼らは、その残りを事もあろうことに俺へと宛がってきたのだ。
しかし実は俺も、このテディベアのクレーンゲームに密かに熱い視線を送っていたので内心満更でもなく、余っているというのならありがたく頂戴することにした。
そんなわけで両手いっぱいの小さなテディベアを袋に入れ、浮き浮きと帰ってきたところだったのである。
「他のも貰ったのか?」
指に通したキーホルダーを回転させながら、十代は机に山と積まれたテディベアの群れに目を走らせる。
「まあな。」
「同じ奴に?」
「いや、別の友達たちからだけど?」
「同時に?」
「ばらばらにだよ。」
事細かに問いただしてくる十代に生返事を返しながら、俺はめでたく我が家の住人となったぬいぐるみ達を至福の思いで見下ろす。
いい年をしてこんなものが好きなのか、と言われるのであまり人には言えないが、俺はテディベアがかなり好きだった。
クレーンゲームで手のひらサイズのものを見ればつつきたくなるし、ショッピングモールで大きなものを見つければ思いっきりダイブしたくなる。
要するにあの肌を柔らかく刺激するふわふわ感が堪らないのだ。