短編小説

□喧嘩するほどなんとやら。
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※十代と覇王様が分裂。




留学生のヨハン・アンデルセンに人目惚れに近かい恋をした。
とにかく会った瞬間ビビっ!ときて、これぞ運命の出会いだと確信したのだ。

俺にはこいつしかいない、と。

なのに、


「おい覇王。なんでお前がここにいるんだよ。」

「煩い十代。貴様ヨハンを部屋に連れ込んで何をするつもりだ。」


なのにこいつも全く同じことを考えていたなんて。
昔から何かと十代と覇王は被ることが多かった。

血縁でもないのに瓜二つの容姿。
よく使うカード、戦法、デッキ構成。
その上好きな相手までとなると、もう我慢ならない。

レッド寮の前で、眉間にしわを寄せて睨み合う。

クリィ…と二体のハネクリボーが不安げに鳴いた。

「これからヨハンと一緒に宿題やんの。」

「一緒に宿題だと?ふん、どうせヨハンの足を引っ張るだけのくせに。」

「何だと?」

「やると言うのか。」

十代と覇王がヨハンを巡って火花を散らすのは、今日が初めてではなかった。

デュエルディスクを構えた二人が、今にも戦闘開始のゴングを鳴らそうとした時。

「あれ?覇王じゃんか!」

「ヨハン!」

場違いな陽気な声が響いた。

夏の太陽を背に現れた青。
十代と覇王の争いの元、麗しのヨハン・アンデルセンだ。

二人は速やかにデュエルディスクを下げると、不自然な笑みを作って居ずまいを正す。

ヨハンは人の良さそうな笑顔で、レッド寮の階段を駆け降りてくる。

「元気か?どこぞの愚か者に妙な真似はされておらんだろうな?」

「俺ならこの通りさ!なんかよくわかんないけど、妙な真似とやらはされてないぜ!」

「そうさ、安心しろよ。俺がしっかり、どこぞの目付きの悪い男の魔の手から守ってやるからな!」

ヨハンを挟んで、ははは!と笑う十代と覇王の様子は、端から見れば仲の良い友人同士に見えただろう。

しかし彼らは、お互いにわかりやすいほどの憎しみのオーラを醸し出していた。ハネクリボー達は柱の影に隠れてがたがた震えている。

だがあらゆる分野―極めて、場の空気を読むこと―に関して若干鈍感な面のあるヨハンがそれに気付くことはなかった。
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