企画小説
□盲目ロミオ
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※時間軸がよくわからないことになってます!
「だからさ、」
「うん。」
深く溜息をつくと、俺はヨハンの手を取る。
昼休み中の喧騒を背景に、俺達は見詰め合った。
「俺はヨハンのことが好きなんだよ。わかるだろ?」
「うん。」
「だから他の奴らにほいほい付いて行かないで欲しいんだ。」
「なんで?」
切なる想いを込めて発した言葉は、無邪気な問いかけの前に砕け散った。
がっくり項垂れた俺を、ヨハンは大きな瞳を瞬かせて不思議そうに見る。
生まれてこの方、他人をここまで愛したことがあったろうか。
寝ても覚めても頭の中を占めるのはたった一人。
顔を見られるだけで幸せだし、ちょっとした会話ができれば嬉しい。
微笑まれればこのまま死んでも構わない、とさえ思う。
『重症。こっちの身にもなってよね。』
そんな俺の心を脳内から盗み見て、ユベルは忌々しげに舌打ちする。
『君ったら四六時中あいつのことを考えてるんだもの。ボクがあいつのこと嫌いなの知ってるでしょ?』
体を共有するユベルはそう訴えてきたが、どうしようもないことなのだ。
俺にとってヨハンは生活の一部で、彼のことを想わない日なんてあり得ない。
それはヨハンへの告白が成功してから日に日に酷くなってきている。
言わば生理現象だ、うん。
――俺はこんなにも苦しんでいるというのに、当のヨハンときたら、そんなのお構い無し。
外出に誘えば皆で行こうと言い出し、泊まりに来いと言えばカードをどっさり持ってきて、朝までデュエルに興じる。
こいつは付き合っているという自覚があるのか、と疑問に思うことは多々あった。
おかげで俺は万年(主に性的な意味で)欲求不満だ。
俺の気持ちを知ってか知らずか、ヨハンは見事なまでに振り回してくれる。
やきもきさせたり、焦らされたり。
これを全て天然でやっているというから、末恐ろしい。
今も、丁度下心見え見えの奴に付いて行きそうになったところを助けてやったばかりだ。
怒り狂う俺をきょとんとした調子で見てくるヨハンは、やっぱり天然そのものだった。