企画小説
□ある日、悪魔に。
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※学パラ。十代が不良です!
「学校って楽しいか?」
そう言って、彼は髪を掻き上げた。
ぱらぱらと零れる鳶色の髪が陽に照らされて、金色に輝いた。
片手に持った煙草から、細い煙が立ち昇っていく。
俺は固い椅子に腰掛けたまま、しゃちほこばっているしかない。
――俺、なんでこんな所にいるんだろう?
目の前で笑う男にじろじろと見られて、泣きたくなってしまった。
「遊城先輩に届け物をしてほしい。」
入ったばかりの部活で先輩達から言われたこと。
俺は二つ返事で引き受け、早速遊城先輩とやらの家を訪ねたのだった。
それが失敗だった。
一学年上の遊城十代は、意外と近所に住んでいた。
俺はこの土地に来て日が浅かったのもあって、彼のことはほとんど知らない。
ただ同じ部活に一応籍を置いていて、滅多に学校に来ないとの話を聞いていたから、大人しい人とか病弱な人とかを勝手に頭の中に思い描いていたんだ。
まあ、どんな人であれ、俺はあまり人見知りしない性質だからなんとかなるだろう・・・と甘い考えで、彼の家を目指していたのが10分前。
預かり物を抱えて、「遊城」と書かれた標識のインターフォンを押す。
しかし待てど暮らせど返答はない。
「留守かな・・・?」
もう一度だけインターフォンを押すと、再びありきたりな呼び出し音が。空しく辺りに響き渡る。
それからもう一回押したけど返事はなく、俺は諦めて踵を返した。
後でもう一度出直そう――と思っていたその時、がちゃりとインターフォンを取る音がした。
『・・・・・・・・・誰。』
低く発せられた言葉は粗暴で、思わずどきりとする。
「あ・・・部活の後輩です。先輩達から預かり物があって・・・。」
声だけなのにこの気迫はなんだろう。
俺の声は情けないことにいつになく大人しく、おどおどしていた。
『後輩・・・、』と短い呟きの後、インターフォンはぶちりと切れた。
カーテンの閉められた部屋を一つの影が過ぎり、玄関先で小さな物音が聞こえる。
それから扉が開かれ、くだんの遊城先輩が姿を現した・・・の、だ、が・・・。