企画小説
□恋せよ魔王
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※覇王様と使徒が存在するパラレルワールドが舞台になってます。
大西洋の孤島に位置するデュエルアカデミア。
デュエリストを目指す若者達が通う明るい学びの庭。
笑い会う生徒の中に、その少年はいた。
青い髪を靡かせ、翡翠の瞳を輝かせているヨハン・アンデルセン。
そしてそんなヨハンを影からじっと見つめる者達があった。
漆黒の鎧に身を包んだ一人は可愛らしい便箋を手に、ボンテージを着たもう一人は腕を組み、呆れたように相方を見下ろしている。
「ねー…いつまでここにいるのさぁ。」
「……煩い。」
うんざりと発せられた言葉に小声でやり返し、鎧姿の少年は不審者の如く影からヨハンを見つめる。
ヨハンの青い髪は陽光に反射してきらきらと艶を帯び、綺麗な顔からは笑顔が絶えない。
鎧の少年はその姿をしばらくじっと観察した後、一つ大きく溜め息をついた。
「あれ?どこ行くの?」
踵を返してとぼとぼと歩き始めた鎧少年に、相方の慌てたような声がかけられる。
「…………今日はやめた。」
「はァ!!?またあ!!?」
一体これで何回目、いや何十回目だと思っているのか――。
力なく肩を落として歩く相方に舌打ちし、ボンテージ少年は彼の後を追い、その隣に並ぶ。
「本当に君には困ったものだよねぇ…。」
落ち込んだ表情を兜から覗かせる少年を見て、ボンテージ少年は先程の鎧少年のものと負けず劣らず大きな溜め息をつく。
この、どうしようもなく不器用な親友は今、恋をしている。
その相手は他の誰でもない、ヨハン・アンデルセン――ボンテージ少年・ユベルの双子の弟。
それに関しては別にいいのだ。
親友が誰に恋をしようと、弟が誰に恋をされようと、ユベルは一向に構わない。
問題は親友の奥手ぶりにあった。
初めは話しかけることは愚か、姿を見ることさえできなかった。
――ヨハンのことが好きすぎて生きているのが辛い――。
そう言ってもじもじしていた鎧姿の親友・覇王をどやしてなんとか向き合わせることには成功した。
しかしその後、この奥手過ぎる親友は重すぎる愛が災いして、不審者の如く壁際からじっとヨハンを観察するようになってしまった。