企画小説
□小さな彼と、大きな願い。
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「お前、もう少しコンパクトになる気ない?」
「・・・・・・・・・あい?(はい?)」
パンに大きく齧り付いたまま、ヨハンは固まってしまった。
向かいではバターナイフを片手に持った十代がくるりと柄を回して微笑んでいる。
瞳を細めてにんまりと笑うその様は、明らかに何か企んでいるように見えた。
レッド寮で迎えた、ある冬の朝の出来事である。
ヨハンは一旦パンを皿に戻すと、まじまじと十代の顔を覗きこんだ。
鳶色の瞳の奥に潜む秘め事をどうにかして暴いてやろうと試みたが、全くその真意を悟ることは出来なかった。
「いきなり何だよ。」
「いや、な?ヨハンのサイズがもうちょい小さかったら、もっと色々好きにできるなあって思ったわけよ。」
どういう意味の色々だ。
ヨハンは一つ肩を竦めて食事に戻ったが、十代といえば「あとこのくらい・・・いや、このくらいか?」などと理想のヨハンサイズを手で表現してみせては、なんとも惜しそうな顔をしている。
彼がこのような軽口を叩くのはいつものことなので、ヨハンは特に気にせずにいた。
そうしていつものように一日が過ぎ、いつものように二人は眠りについたのだが――
事件は、起こった。
というか、十代が起こした。
翌朝、目を覚ましたヨハンが最初に感じたのは言いようのない違和感だった。
体の節々がだるい・・・いや、軋んでいる?
「なん・・・なんだ・・・・・・?」
肩を擦りながら気だるい体を起こして、ヨハンは自らの身に起こったことを確認した。
脚、腹部、腕。
見たところなんの異常も見受けられない。
ほっとしてもう一度横になろうとすると、必然的に隣で眠る十代の姿が目に入ってくる。
普段着に似た黒のタートルネックを着込んだ背中が見え・・・
「あれ?」
ヨハンはぱちり、と目を瞬かせた。
何故だ。
何故十代の背中が、こんなに広く見えるのだ?
咄嗟に嫌な予感が走り、ヨハンはもう一度自分の体を確認した。
異常はない。
昨夜となんの変わりもなく、寝巻きもきちんとしていて、一糸の乱れもない。
そしてもう一度十代を見――。