企画小説

□一つの林檎に二匹の蛇
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※無理矢理系の性描写がありますので、18歳未満の方、苦手な方はご遠慮下さい。










ああ、神様。
俺の恋は今、一線を越えようとしています。



俺はこっそりと溜息をつく。

見上げれば真上は満天の星空。
そのど真ん中を占領している月は綺麗な弓張り型を描いていて、まるで誰かの意地悪な微笑みにも似ていた。

俺はよく意地が悪い笑い方をすると言われるけど、丁度あんな感じなのかもしれない。


そんなことを考えて深く深呼吸すると、今度は下に目を落とす。

浜辺独特の埃っぽい砂の上に敷かれた、着古した赤い制服。
その上に散らばった青い髪――寝かされたヨハンの大きな瞳と目線がかち合うと、恥ずかしそうに瞬いて逸らされてしまう。

しっかりと俺の手を掴んでいたはずの指が戸惑ったかのようにぎこちなく動いた。



ああ、神様。


ぎゅっと瞳を瞑るその様子で、ヨハンが怯えているのがわかる。
そこまでわかっているのに、その手を解放してやる気は更々なかった。




ああ、神様。


俺は今から、ある人を汚します。

薄汚い二枚舌で以って捉えた彼を、

天使のような、最愛の人を、この毒牙にかけます。


だけど、ああ。


再び深い溜息が零れてしまう。
それは僅かに残された良心からくるものだった。


別に怖じ気づいたわけじゃあない。

ヨハンを抱きたかったのは本当のことだったし、こうして受け入れようとしてくれたことは嬉しい。

だが、その理由は?
どうして俺はヨハンと繋がりたいんだ?
単純な性欲というやつだろうか?
出来ればそんなものじゃないと願いたい。

だが、この場合まだ本能的な理由の方がマシのような気がしてしまう。


もしも――そう、もしも。


欲望だけが理由じゃないとしたら。



一つになるのが目的ではなく、彼を「汚し」たいというのが、俺の本心だとしたら?

俺は、自分で自分を許せるんだろうか。

ヨハンは綺麗だ。

容姿を示しているわけではなく、彼は本当に「綺麗な」人間だった。

純真、無邪気、誠実。

ヨハンを表わす言葉と言えば、こんなものばかりが思い浮かぶ。

そう色で例えるなら――白。
完全無欠の白、だ。

その純真さは見ていてとても心地よいものでもあり、同時に


俺の怒りを煽るものでもあった。
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