斉藤君と幸人さん

□第二話
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「幸人さん、朝ですよ」


あれから一週間、この男―斉藤大紀―は自分の家の出入りをしている。

朝起こしに来る→朝食の準備→朝食→家事→昼食の準備→昼食→家事→夕食の準備→夕食→家事→寝るまで隣にいる→帰る

まるで家政婦、いや、世話人並みの働きだ。

しかし出入りだけならまだ良かったかもしれない。

昨日、彼は住み込みを要求してきた。


「一軒家に一人暮らしって、世間一般から見たら不思議なことなんですよ。一週間一緒にいて思いました。僕が一緒に住みます。部屋はどこでも構いません。いいですよね」


自分はもう、彼に何を言っても無駄だということを理解した。


「じ、自由に使ってください…」

「ありがとうございます!!」


ほんとに嬉しそうに笑うものだから、憎むことも出来なくなってしまった。

自分の馬鹿。

慣れないのだ。

いつも一人のこの家に誰か人影が、人の雰囲気があることが。


「…あ、」

「ど、どうしまひた!?」


すぐにビクつく自分が情けない…


「幸人さんも、こういうの好きなんですね」


彼の手には美少女雑誌。

表紙から既に卑猥で、中心に描かれている貧乳の女の子は男根やら触手やらに囲まれて白濁とした液体をかけられ嬉しそうに微笑んでいる。

勿論二本刺しだ。

その隣には大きな字で「触手特集」と記されていた。

そのテの人にも刺激が強すぎるらしく、勿論一般書店になど売っていない。

ちょっとしたことでは見つけられないような深い深い所を探してくと見つかる。

そういった刺激には強い、逆に言えばそのテ向けの雑誌は温すぎて読めない自分にはもってこいの雑誌だ。

それを彼はパラパラと平気そうに捲る。


「へー、やっぱりこういうの見てヌくんですか?」

「ちゃ、あの、」


彼は平気なのだろうか、こういったものは。

自分だってチラッと見えたふたなりの女の子が下の穴という穴に突っ込まれてイってるページに少し反応してしまったというのに…


「平気なんですか…?」

「いやあ、腰に結構キますよ」


彼は嬉しそうにヘラヘラ笑いながら首筋を掻く。

なんだこの笑顔は。


「幸人さんは大丈夫ですか?」


何の前触れもなく突然彼は自分のズボンを引っ張り中を覗いた。


「ぅひぃ!!ちょ、ちょちょちょ!!!!」

「あれ、幸人さん」


見られた…。

朝から、しかも寝起きにそんな刺激的なもの見せられたら健全な男なら勃つに決まってる。

彼はニヤニヤ笑いながら覗いてる。


「でもすごいですね。あれだけのもの見て半勃ちですか…。僕なんてこんなですよ」


手を下半身に導き触れさせられる。

ガチガチに固まった男根ひとつ掌に確認。


「なななな何するんでしゅ、か!!!」

「初々しいなー。カミカミじゃないですか」

「あ…あなたは…ソ、ソッチの人なんですか…?」

「…?あ、あぁ、そういう。違いますよ、ノーマルです。というか…普通ですけど、男は好きです」


それをソッチの人って言うんじゃないかなー…


「幸人さん…いい加減気付いてるんでしょう?僕の気持ちが、貴方にあること」

「は…?」


ゆっくり、ほんとにゆっくりだが確実に自分に接近してくるこの男の目は、ギラギラと欲にまみれていた。


「幸人さんだって、流石に初めてではないでしょ…?大丈夫です…ちゃんと慣らしますし、中もしっかり満たします…あぁ…可愛いです…幸人さあん…」


あまりに突然のことで呼吸が乱れる。


「好きです…幸人さん、僕の愛しい君…」


歯の浮くような恥ずかしいセリフとトロリとした視線。

姿とは裏腹に熱っぽい手のひらと表情。

ひゅ、と虚しく掠れる空気の音が、耳に届いて鼓膜を震わせた。


「あゃ…あ…あぅ…」

「ゆ、幸人さん…?」


目の前が霞む。

苦しい、タスケテ―…

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