御話 短創作
□猫とランドセルとパソコンと 序章
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きっかけはほんとに些細なことでしかなかった。
俺はバイト終わりで疲れながら帰路についていた。
前からランドセルを背負った男の子が一人、此方に向かってくる。
「おじさん。猫、好き?」
「え?おじさんって…。俺はまだ25だ」
「猫、好き?」
「…うん、好き」
「じゃあコイツ、貰って」
初対面の小学生にいきなりおじさんと言われた挙げ句、灰色の仔猫を渡された。
「おい、渡されたって困る」
「好きなんでしょ」
「家ペット禁止だ」
「アパートなの?」
「金がないからな」
「ふうん」
少年は猫の首を掴むと地面に下ろした。
ありえない。
こんな仔猫を捨てるのか?
「おい、このまま置いてくのか」
「おじさんがもらってくれないなら」
「だから家は…」
「じゃあ置いてく」
「ちょ、分かったよ!!…貰うよ」
その日から、俺の一人と一匹生活が始まった。