斉藤君と幸人さん
□第十話
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「あの…出かけるんですか…?」
気だるい暑さ引きずる昼下がり。
僕はスニーカーに片足を突っ込んでいた。
「ちょっと従兄弟の所に」
「…今日の日没は、7時、です、よ…」
「はい?」
「………何でも、無いです」
この頃、幸人さんは僕が出かけるのを見つけると、日没の話をする。
そもそも幸人さんは天体に興味を持っていたのだろうか。
分からないけど。
「じゃあ、行ってきます」
「…はい」
気のせいかな。
幸人さんの表情が暗くなった気がする。
寂しいのかな。
そうだったら嬉しい。