斉藤君と幸人さん
□第十一話
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突如、斉藤くんの従兄弟に部屋まで拉致された。
「な、なな、なんれすか…」
「お前は、大紀を好きなのか?」
「はい…?」
「だから、大紀のことを好きなのかって」
「う…そーやって、聞かれると、分かんないんれす…」
斎藤くんは優しいし無理に心の中に踏み込んで来たりはしない。
けど好きかどうかと問われると分からない。
ただ、彼が傍にいると心地いいのは確かだ。
「ふーん。アイツが出かけるとき日没の時間言ったりするくらいなのにか」
「!!!!」
「大紀は鈍感だから、はっきり言わないと気持ち汲み取ってもらえないぞ。アイツの気持ち知ってんだろ」
「…はい」
「嫌なら嫌ではっきり言ってやれ。アイツ、お前の気持ちがいまいち分からないからヤりたいの我慢してんだから」
………………
今、おかしな言葉が聞こえた気がした。
やりたい?
何を?
誰が?
…そういう、こと…?
大紀のすることに、全くそんな雰囲気はなかった、はず。
「それ…さ、斉藤くん、が…?」
「おう。シたいけど幸人さんが過呼吸起こしちゃいそうで怖いから出来ないって。心配なんだと、お前のこと」
「……」
なんとも複雑だ。
「…じ、自分は、その、あの…」
「…アンタのその感じ、分からないでもない」
「はぇ…?」
斉藤くんの従兄弟…上杉くんの顔が、ちょっとだけ歪んだ気がした。
「俺さ、今働いてるとこの上司、ていうか社長令息っつーの?その人が好きなんだよ」
「はあ…」
「けどさ、その人はずーっと片想いしてる奴がいんの。嫌ってほど話聞いたし時々ほんとに苦しそうな顔してさ」
はっきり言おう。
自分にはその気持ちは分からない。
好きだ、とか、そういう気分が未だに分からないのだ。
「…ど、どうして分かるんですか…」
「あ?じゃあお前はどうして大紀に好きだって言ったんだ?」
「………」
何故だろう。
何故自分は斉藤くんに好きだと言ったのだろう。
「…お前、バカだろ」
「ば、バカって…なんですか…」
「バカはバカだよ」
「…そうですか」
「俺はさ、自分を見てほしいって思うようになったから好きだって思っただけだよ。特別何かあるとかそういうわけじゃない」
自分を見てほしい…
自分も斉藤くんに見ていてほしいのか…
違う。
「じ、自分は…斉藤くんに、傍に、いて欲しいんです…」
「へえ。それでいいんだよ。で?体は?」
「…体?」
「セックス」
「っ…い、嫌では、ないですけど…」
怖い。
開かれてはいけないところまで暴かれてしまいそうで怖いのだ。
「それ、大紀に言ってやれ」
「はい…?」
「嫌ではないですって、それ」
笑った気がした。
上杉くんは、自分に似ていると、申し訳ないが思ってしまった。