斉藤君と幸人さん
□番外編3 裏側
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「……」
「…ごめんなさい」
近所の喫茶店に行った幸人と大紀は隅の席に座り時間を潰していた。
「誉とあの人をくっつけるにはああやって荒くしないといけなかったんです」
「…分かってます」
幸人の声は相変わらず沈んでいた。
表情も暗い。
今までにないくらいの気の落ちようだった。
「…さ、斉藤くん…」
「なんですか…?」
置かれた手はどこか不安げに揺れて、それはあまりにも儚いもののようだった。
「…自分は、斉藤くんが…好きです…」
震える指先だけで幸人は大紀の手を握った。
折れそうなくらいに弱い指先。
大紀の胸は締め付けられた。
「…好き、なん、です…」
胸の奥から絞り出されるように小さく震える声は、今にも崩れる硝子細工のようだった。
「…ごめんなさい、もう、あんなことは、しませんから…!!」
幸人の表情が歪み、目から涙が溢れた。
つられるようにして大紀の目からも涙が溢れた。
喫茶店で男がふたり泣いている、という状況はあまりにもおかしな光景なのだが、この時のふたりにはそんなことお構いなしだった。
その後お詫びと称して代金を払いそのままホテルに直行、幸人の求めるままに体を重ね愛した。