斉藤君と幸人さん

□第十七話
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いつもと変わらない朝。

いつもと変わらない様子。

けれどソレは突然起こった。


『すいません幸人さん、今日帰れそうにありません』

「…はい?」


残業はよくあることだった。

なんたって大手だし…

けど何時になっても帰ってこないことはなかった。


「あの…残業、ですか…?」

『まあ…そんなとこです』


このところどうも斉藤くんの様子がおかしかった。

残業にしては多すぎる。

それによく女の人から電話がかかってくる。

本当は疑った。

けれど口にすることは出来なかった。

嫌われたくなかったから。


「…分かりました」

『ちゃんと窓閉めてくださいね』

「…はい」

『…幸人さん』


優しい声。

思わず泣きそうになったけれど、堪えた。

鼻の奥が痛い。


「ぁい…」

『大好きですよ』


電話が切れた後、堤防が決壊したかのように泣いた。

斉藤くんに会ってから自分はよく泣くようになった気がする。

泣いた次の日は疲れきってるから泣きたくないのに。

結局泣き疲れた自分は夕飯も食べずに(昼も食べてない。食べなくても大丈夫な体になってしまった。なんてエコな体だ)寝てしまった。

泣き寝入りというやつである。
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