斉藤君と幸人さん

□第十一話
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「あ、幸人さん」

「あ…」


斉藤くんは自分のシャツを被ってニヤニヤしていた。

申し訳ない…。

少しだけ、気持ち悪いと思ってしまった。


「キモい大紀」

「だって誉が幸人さん独占しちゃうから」

「お前が聞けって言ったんじゃねーかよ」

「あ、どうだった?」


今なら、話の内容が分かる。

言うべきか言わざるべきか。

いや、言わなければきっと斉藤くんはまた悩むのだろう。

…自分も、よく分からないこの気持ちに悩まされなくなるかもしれない。


「あ、あの…」

「なんですか?」

「…嫌じゃ、ないです…」

「え?」

「セックスしてもいいって」

「……」

「…ほんとに?」

「(こくん)」


ああ恥ずかしい…

斉藤くんの笑顔と反対に、自分はどんどんうつむくことになった。


「ウザイ」

「ひどい誉」

「俺帰る」

「あ、送る」

「バカ。ここでアイツを放っとくなんてアホがやることだ」

「だからキツいって…」

「じゃあなばいばい楽しめよ」

「あ、あの…ありがとう」

「…どーってことねえよ。また来てやる」


上杉くんは、あっという間に帰っていった。

斉藤くんと二人。

おかしな空気が流れる。


「…幸人さん」

「は、はい」


そっとぎゅっと、斉藤くんの腕が腰に回され後ろから抱き締められる。

熱い吐息が耳元にかかる。


「…抱いても、いいですか…?」


ドクン―


「あ、あの、えっと…」

「あなたが欲しい…」

「……」


上擦った声が、耳から入って脳を痺れさせた。


「幸人さん…ダメなら、嫌がって…」


指が首をなぞる。

もう片方の手が服の中に入る。


「(…ああ、)」


もう何も考えられない。


「幸人さん…?いいの…?」

「っ…い、嫌じゃないって、はあ、さっき、言いました…」


声が指先が震える。

苦しい。

呼吸はできているのに。

心拍数が倍増しているようだ。


「っ!!!」


斉藤くんの唇が耳朶を食んだ。

舌で舐められ甘く噛まれ内部に舌を入れられた。

背筋をゾクゾクと痺れにも似た何かが走った。


「あぅっ…み、みっ…!!」

「好きなんだ…?耳こうやってはみはみされるの…」

「や、やだ、ここ、だめ…」


リビングで、テディベアとかに見られてる感じがすごく嫌だった。


「ああ…幸人さん、寝室行きましょう?ね?続きは、そこで…」


ゆっくり手を引かれ寝室へと導かれる。

体が強ばる。

自然と力が入ってしまう。

あれ…斉藤くん、こんなにかっこよかった…?

乙女思考。


「幸人さん…」


スプリングが唸る。

まるで映画のワンシーン。


「おいで」









未知の感覚

暴かれる快楽

伸ばされた手に自分は、

思わず指を伸ばし、

触れようとした。
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