斉藤君と幸人さん
□番外編2
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「…はあ」
「暗い溜め息やめろ。なに?お兄さん聞くよ」
「変なテンションやめてください明さん。疲れてんですか」
「うんすごく」
「じゃあ休んだらどうですか。疲れてちゃあアイデアも出ないでしょ」
「優秀な誉くんのお言葉に甘えてちょっと休む」
「はいはい」
この扱いにくい上司が俺の今の雇い主、世界に羽ばたく有名デザイナーの永田明である。
俺様で自分が欲しいものは何でも手に入れる、まるでジャイ●ンのような男だ。
「なあ誉」
「はい」
「何かあるなら言えよ」
「っ…」
…そして、俺が今密かに気にしている男でもある。
「…俺が昔好きだったやつに男の恋人ができたんです」
「フラレたの」
「違います。別に今は何とも思ってないし」
今はアンタに気移りしてるし…なんて言えない。
ちなみにこいつは俺の性癖を知っているし俺もこいつの性癖を知っている。
「へー、状況としては僕と一緒だ」
「はい?」
「この前同窓会に行ってきてさ。僕の好きな人はクラスで馴染めてない人だったから来るか不安だったんだけど、来てくれてさ。…男同伴で」
「好きな人…?」
「片想い絶賛継続中。強姦紛いなことしたことあるくらい好きな人」
「…サイテー」
「それくらい手に入れたかったんだよ」
明さんに好きな人。
俺、本格的に好きになる前にフラレたよ…
「…おー、」
「…なんです」
「そのうつむいてる顔、幸人に似てる」
「…幸人?」
俺に似てる"幸人"って…アイツか?
大紀の猫か?
「誉」
「はい?」
「これかけて」
どっから出したかダサ眼鏡。
…アイツのと、同じデザイン…
「…どうです」
「…幸人、」
途端に緩む口元。
コレがあの有名デザイナー永田明なのか…
「ほ、誉、これからそれかけて仕事してほしい」
「なんでですか!!」
「上司命令だ」
「ひでー…」
こうして俺は、ダサ眼鏡着用で仕事をすることになった。