木ノ葉に咲く花

□第四話 最悪の依頼人
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 午前四時。
 目覚ましが鳴る二時間も前に、サスケはふと目を覚ました。
 カーテンの隙間から射し込むオレンジ色の朝日が、フローリングの床に明るい筋を刻んでいる。
 どこか遠い所で、気の早い鶏が時の声を作るのが聞こえた。

 静かすぎるというのも考えものだ。
 いつもなら隣人が何かしらゴソゴソ動いていて、その微かな物音がかえって心地よかったりするのだが、サクヤは半月前から任務に出ている。

 寂しい訳ではないが、全く気にならないと言えば嘘になる。
 物心ついた頃から影のように寄り添い合い、傍にいるのが当たり前になっていた分、暫しの別れがほんの少し心細く感じられた。

 ベッドからのそのそ起き出すと、サスケはカーテンを開けて洗面所へ向かう。 蛇口を捻れば溢れ出す、きりりと冷たい水。

 薄く残る眠気と雑念を洗い流すように、いつもより勢いよくばしゃばしゃと顔を洗った。



 *

『ニャア゛ーーーッ!!!!』

 部屋中に響き渡る哀れな猫の叫び声。
 それにはお構い無しに、飼い主のふくよかな女性は愛猫をきつく抱き締め、何度も頬擦りを繰り返した。

「ああぁぁあ!!私の可愛いトラちゃん!死ぬほど心配したのよォ〜?」

 これにて迷子ペット“トラ”の捕獲任務は終了だ。 あの飼い主じゃ逃げ出したくなるのもわかるな、と遂に泡を吹き始めたトラへ同情の視線を送りつつ、サスケは次なる任務が言い渡されるのを待つ。
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