聖闘士星矢
□眠れない理由
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ポセイドン、ハーデスとの、衝撃の同盟発言から1週間。
俺たち黄金聖闘士は自宮の修復作業で、休みもなく働いていた。
中には破壊されていない宮もあったが、その宮の主達は、他宮の修復作業に駆り出され、あちこちの宮を行き来している。
俺もまた然り。
天蠍宮の留守を、たまたま見かけたカノンに任せ、今は獅子宮にいる。
「アイオリア、此方は終わったぞ」
倒された柱を元の位置に戻すと、俺はこの宮の守護者、アイオリアに声をかけた。
アイオリアはおぼつかない足取りで、こちらに近付いてくる。
どうやらこの連日、アイオリアは寝る時間をも削って、働いていたらしい。
いきなりだが、アイオリアには従者がいない。
ふつう黄金聖闘士には従者がついているのだが、サガに流された偽の情報、つまりアイオロスのことで、反逆者の弟として、黄金でありながら従者をもつことを許されなかった。
そのため獅子宮は、特に酷いダメージだったシャカの処女宮より、作業が遅れていた。
「ミロ、すまない」
「すまないは無しだ、アイオリア。……しかし、アテナエクスクラメーションの威力がここまで凄まじいとはな」
サガ達とアテナエクスクラメーションの張り合いをやって生きていたのは、アテナの御加護があったからに違いないと、俺はしみじみと思うのだった。
「……ミロ」
遠くを見つめていた俺に遠慮がちにアイオリアが声をかけてきた。
「なんだ?」
「……今夜、天蠍宮に泊めてくれないか?」
「かまわないが、どうかしたのか?」
それまでの凛とした表情から、何かに怯えているような顔に変わった。
「獅子宮は今、まだ住めるような状態じゃない。つまり寝るときは、外なんだ……俺、最近寝れてないんだ。ユウレイが怖くて……」
言えば言うほど真っ青になっていくアイオリア。
そう言えばこいつは昔から、幽霊の類いが嫌いだったな。
克服されたものと思っていたのだが。
まだ直っていなかったのか。
「1つ聞くが、お前が寝ずに働いていたのは、それもあったからか?」
「……」
返事はなかったが、沈黙が問いかけの答えとなった。
今日の天蠍宮の晩餐は、何時もより豪華で、何時もより酒が多く旨かった。
アイオリアがぐっすりと眠りこけるまで飲み会は続いたのだった。