♪いろいろ企画箱♪

□(旧)マルコ祭2:未知との遭遇
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モビーを始め、それぞれの船が位置を示すランタン1つだけを船尾にぶら下げ、ほぼ暗闇に溶け込んでいるなか、3号船は甲板を照らす灯りで存在を自己主張しながら浮かんでいた。
灯りの下には、クリエルが愛銃の分解掃除にいそしむ姿があった。今日のように穏やかな凪の日の停泊時は揺れが少なく、夜は人もいないため作業にうってつけなのだ。

白い布を甲板に広げ、その上で解体を行い細かな部品を1つずついとおしげに手に取っては丁寧に拭き上げ、順番に組み立てていく。組み上がった銃を更に磨けば、ランタンが放つオレンジ色の光を反射し輝いていつもより美しくなった相棒を、クリエルは満足げな瞳で眺めた。
そして、試し撃ちしたい気持ちを抑えつつ立ち上がり撃ち込む構えを取る。

と、そこに青い光が不意に目の前に飛び込んで来た。それが不審なものでなく見慣れた友である事は明白で、クリエルは銃を下ろし、よぉと声をかけながら手をあげた。人獣型の姿で青い翼を広げ舞い降りてきたマルコもまた、軽く挨拶してへりに着地した。
「夜の散歩か?優雅なこったなぁ」
ニヒルな笑みを浮かべたクリエルにマルコは軽く笑って、
「そういうお前さんは甲板を独り占めして相棒のお手入れしてたんだろい?優雅なこった」
と、軽く笑って返した。
一本取られたとばかりに、
「まあな」
と肩をすくめて見せたクリエルに、マルコは更に言ってやろうと口を開いたその時、突如目眩が襲ってきて、小さく
「あ・・・」
と呟きが漏れ、次の瞬間には世界が逆さまに映っていた。
夜の暗い海に落ちたら助けてもらうのは困難だ。上にあがらなくては、と翼を広げるも激しい倦怠感で思うように身体が動かず・・・遠くで見張り番が名前を呼ぶ声がした。



クリエルは目の前で起こったあり得ない出来事に愕然とし、
「お・・・おいっ!マルコッ!」
と叫び、手にしていた銃を放り出しへりに駆け寄って下を覗いた。普通ならすぐに舞い上がって来るところなのだが、クリエルが眼にしたのは力無く羽ばたきながら堕ちていく姿だった。
暗い海の底に沈んで見えなくなる前に、青い光が見えている間に捕まえなければ一巻の終わりだ。
クリエルはすぐさま海へと身を投じた。


海に落ちて青い光が消えていく瞬間、マルコの眼にクリエルの姿がこちらへと近付いて来るのが見え、焦りは一気に消え失せ、安心感が心に溢れた。
“あぁ、沢山の書類の山と仲間を残して逝かずに済んで良かったねぃ”
などと消えかかる意識で考えながら、完全に海に沈んで力と肺の中の酸素が抜けていくのと同時に、力強く抱き締められる感覚に包まれ、マルコはかろうじて繋ぎ止めていた意識を手放したのだった。
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