管理人の献上箱

□(旧)日誌J:それはささやかなドラマ
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普段は和やかな雰囲気が漂う子くじら2号船内の食堂だが、今日はピリピリした空気が流れ出ている。
なぜなら、コック見習いが一人前の料理人として調理場に立つべく最終試験を受けているからで、その見習いは元々八番隊に所属していた魚人隊員だ。

包丁をまともに握ったこともない男だったのだが(短刀の腕は最高だがやはり勝手が違うものだ)料理の芸術に感化され、四番隊への異動を申し出たのだ。
エドワードから1つ返事で許可をもらい、その後2号船の料理長の下で一年の猛特訓を受け、今日は最終日。最終試験として隊長兼総料理長サッチの前で課題をこなし、周りでは他のコックや8番隊の親しい隊員達が行く末を見守っていた。


永遠に続くかと思うくらい長い一時間が過ぎ・・・
皆が固唾を飲んで見守る中サッチは目の前に並べられた料理を1つずつ味見し、満足げな笑みを浮かべた。
「手際も味も問題なし。完璧だ。自信を持って明日から厨房に立っていいぞ!」
その言葉に歓声が沸き起こり、新しいコックは歓迎と祝福の抱擁やスキンシップで揉みくちゃにされながらも満面の笑みで応え、サッチは優しい笑みをたたえながら皆と離れ入口の所に立っていたナミュールの横でぴたりと立ち止まった。
「隊は変わったが俺の大事な仲間である事に変わりはねえ。可愛がってやってくれよ」
無表情でボソリと呟いたナミュールにサッチは笑みを浮かべながらも真剣な眼差しで答えた。
「勿論だ。俺が責任を持って預かる。任せとけ」
小さくナミュールは頷いた。

そして去っていくサッチの背中に
「今晩一杯やらねえか?」
という声が投げ掛けられ、サッチは振り返り軽く敬礼したのだった。
「喜んで、ナミュール隊長!」
<END>

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