管理人の献上箱

□(旧)日誌A:ジョズの一日
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XX年XX月XX日 
素晴らしい追い風、晴れた空。


水平線にゆらりと見慣れた船の影が2つ表れ、モビーディックからは歓声が上がった。遠征に出ていた2号と3号が3ヶ月ぶりに親元へと帰ってきたのだ。航海長が上手く風を捕まえたのだろう、思った以上に速く二隻は合流した。
「よぉ!相変わらずむさ苦しい面してんなぁ、ジョズ!」
船がモビーディックの真横につけられるや否や、ブレンハイムから柄の悪い挨拶が投げ掛けられた。お前の方がよっぽどむさ苦しい出で立ちだろうが、と心の中で毒づいてから返事を返す。
「元気そうでなによりだぜ馬鹿野郎!ちゃんと手土産持って来たんだろうなあ!」
ブレンハイムは、にんまり笑い後ろを指差した。指された方向に目を向けると、二隻の船は大きな塊をロープで牽引してきていた。
どうやら道中で海王類を仕留めて来たようだ。それに気付いた船員達は更に喜びの声を上げた。実のところこの辺の海域には海王類があまりおらず、新鮮な肉が入手できなかったため、塩漬け肉や干し肉で凌いでいたので、船員達が異常に喜ぶのも無理はない。

沸き上がる歓声を沈めたのは、スピーカーから流れたオヤジの声だった。
「ご苦労だったな、息子達!詳しい報告は後で聞こう。せっかく久しぶりに全員が揃ったんで、島で酒盛りがてら傾船修理をやってくれ。面倒だろうが、よろしく頼む。監督はマルコに任せてあるから、各自隊長の指示に従って安全に作業してくれ。以上!!」
その後、間髪をいれずマルコの声が響く。
「島には後一時間ほどで着くからよい、今日は荷物の搬出だけきっちり終わらせるぞい。ついでに各船の備蓄品を整理して公平に割り振るから、在庫品のリストを俺のとこまで持ってきてくれ。ついでに実際の数と合ってるかチェックするから備品ごとに一ヶ所に固めておいてくれよい。日が落ちるまでに終わらせる!夜になったら宴会だい!仕事の後の酒は格別だからよい、皆頑張って終わらせるぞい!」

傾船修理、と聞いて若干不満の声をもらしていた船員達は酒盛りと聞いて気を取り直したらしく、喜びの雄叫びをあげた。

傾船修理とは、船を浅瀬に乗り入れて潮の満ち引きに合わせて船を傾けさせ、船底についた汚れ、海草や蛎殻を掻き落とし手入れをする作業の事だ。
この作業をするためには、船に積んだ重量物や備蓄品を陸に下ろし、喫水を浅くする必要がある。物を下ろすのも汚れを掻き落とすのもかなり骨が折れる作業だから、皆の気が滅入るのもまあ無理はない。
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