管理人の献上箱

□(旧)日誌C:アトモスの秘密
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XX年XX月XX日
緩やかな風が帆を揺らす、平穏な午後。



後方を航行していた4号船は、突如現れ襲いかかってきた恐竜のような海王類と対峙していた。他の船では皆が仕事の手を休め、大きな声援を送っている。勿論、今日の晩飯で新鮮な肉が食べられる事を期待してだ。

4号船での食糧の確保の際、スポットライトを浴びるのは、14番隊隊長「スピード・ジル」である。
名の通り身のこなしが早く、巧みに槍を扱う。他の捕獲班も優秀だが、隊長だけあって彼は海王類との戦いに秀でていた。
海王類を大分弱らせたスピード・ジルは4号船の船長に声をかけた。
「トドメは派手にやった方が盛り上がるよなぁ、アトモス!お前さんに後は任せるぜ!」
それまで、ショーを観ている感覚で、呑気に大捕物を眺めていたアトモスは思いがけない振りにキョトンとした顔で、
「ん?俺がか?」
と返した。
周りを見渡せば、隊員達が期待に溢れた眼差しを向けていた。アトモスは戦闘員なので、本来捕獲には加わらない。しかし、アトモスは巨体の持ち主であり、彼が振るう二本の剣の破壊力は凄まじく、故に隊員達の羨望の的なのだ。
隊長として、部下達の期待には応えなければ、とアトモスは奮起し、ゆっくりと重い腰をあげた。
「いいのか、俺がいいとこ取りして?」
気が進まないです、としっかり書かれた顔で問うアトモスに、スピード・ジルはあっけらかんとした顔で答えた。
「俺の武器は地味で地道だからさ〜お前がやった方が速いし派手だろ?皆楽しんでるし、やっぱりパフォーマンスは派手じゃなきゃね」
そうか、と呟いてアトモスは愛刀を構えた。既に返り討ちにあった海王類は虫の息で、放って置いてもそのうち息絶えそうな感じだったが、皆の声援に応えるべく、アトモスは海王類の頭に飛び乗り、剣を突き立て・・・

海面に首が落ち、派手に水しぶきがあがった。



その瞬間、先頭を行くモビーディック号でも大きな声援があがった。少し遠くで行われていた捕獲ショーに、隊長であるエースとサッチも一緒になって観戦していた。
「やったぜ〜!今日は美味い肉が食えるな!なあ、サッチ!」
上機嫌のエースにサッチも嬉しそうに答える。
「おう!任せときな!あの海王類は新鮮だったら刺身でも食えるぜ!」
サッチの言葉にエースはよだれを垂らしかけ、慌ててゴシゴシと拭う。そして、今夜のご馳走に改めて目を向けたその時、上空に見えた大きな影に更に目を輝かせた。
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