管理人の献上箱

□(旧)日誌G:それはささやかな幸せ
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XX年XX月XX日
心華やぐ大砲の音、緩やかな午後。


雲一つない晴天。船影一つない穏やかな水平線。

そんな平和そのものの情景に全くそぐわない爆音が海に響く。少し遅れて大きな水柱が遠くにできると、船内で歓声が上がった。


事の発端は1日前にさかのぼる。白ひげ海賊団に挑んできた海賊が宣戦布告とばかりに大砲を打ってきて、たまたま真横を帆走していたアトモス率いる4号船が横っ腹に穴を開けられてしまったのだ。無論、仁義を通さない輩に同情してやる義理は無いので、速攻船ごと沈めてやったが。

そして、その後すぐに修理に取りかかり今に至っているのだが、少々問題が発生してしまった。船体自体は大工達で対応出来たのだが、壊れた大砲の修理がお手上げ状態で、報告を受けたアトモスは掌砲長であるクリエルに状況を伝えた。すると彼は、ついでに修理の研修をしようと言って張り切って現れたのだ。
砲手や武器管理に携わる隊員達を部屋に集め、クリエルの講習が始まった。

壊れたのは2台でそれぞれに“おてんばラクヨウ”“稲妻のジル”という刻印がつけられている。刀を名で呼ぶように、砲手達もまた、相棒である武器に親しみを込めて、その特長にちなんだ名をつけるのが習慣なのだ。
(余談だが、大砲も一つ一つ癖がある。遠くまで弾を打てるものは“ジル”、破壊力が凄まじいが跳ね返りが激しく扱いが難しいものは“ラクヨウ”といった具合だ)
あちこち部品が破損しているなか、名が消えなかったのは嬉しい事だった。
「さて、今から修理の実演をやる。俺が“ラクヨウ”を治すからお前達は“ジル”を直してやるんだ!よく見てろよ。分からない事はすぐに確認するんだ!いいな?」
「アイアイ、サー!」
砲手達の威勢の良い返事を皮切りにクリエルの厳しい手ほどきが始まり・・・


1日経過しお昼過ぎ、ようやく修理が完了して試し打ちが行われ、以前にも増して優秀な相棒となって帰ってきた事に大きな歓声が上がったという訳だ。
遠目で見守っていたアトモスは、ようやく仕事が終わった事に安堵し、クリエルの元に向かった。皆を労うつもりだったのだが、階段を下る途中でクリエルと鉢合わせしてしまい、アトモスは拍子抜けした声をあげた。
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