♪いろいろ企画箱♪

□(旧)ハグ6:「雪蛍」
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立ち寄った島は一面白い雪島で、一行は大きな火を起こすべく各々薪集めに精を出している。
中でもフットワークの軽いマルコは、薪が沢山落ちているであろう林へと1人、足を伸ばしていた。
ふわりと降り立てば雪を被って白と茶色でまだら色になった木々が目の前一杯に広がり、マルコは軽く溜め息をついた。
生き物の気配すらしない寒くて白い世界。
用を済ませてさっさと脱け出せばすぐに暖かな火と家族が迎えてくれる。
それは紛れもない事実で頭では良く分かっている事なのに、訳もなく悲しくて泣きたくなって・・・マルコは手にしていた薪を投げ出し、その場に突っ伏した。雪のクッションに冷たく優しく受け止められ、マルコはゆっくり眼を閉じた。
チラチラ雪は降り続けていて頭に、背中に降り積もっていく。
何を馬鹿な事をやってんだと自嘲しながらも、無性に悲しくて、このまま消えてしまいたくなる衝動に駆られて身動きが取れなかった。



その頃、白ひげ一家の中ではマルコの戻りが遅い事に一抹の不安が広がっており、誰よりも先にジョズが名乗りを挙げ、様子を伺うべくマルコの向かった林へと足を早めていた。
ジョズは巨体ながら隊長の中でも1、2を争う駿足の持ち主であり、瞬く間に林に到着した。名を叫びながら奥へ奥へと足を進める。返事は無く、獣の気配すら感じられない状況にジョズは小さく唸り声をあげた。
もうすぐ日がくれる。今でも空は灰色で薄暗いというのに、完全に暗闇になれば見つけるのは更に困難だ。
焦りを覚えながら眼をこらしてあたりを見渡していると、遠くに青い光が見え隠れしている光景を捕らえ、ジョズは光の方へと駆け出した。


雪の下で蛍みたく点滅を繰り返す光に手を伸ばし、被った雪を払いのければ紛れもない友の姿が現れ、安堵の溜め息が漏れた。
凍傷が出来ては治すのを繰り返す肌は青く光っては消えて、何だかこのまま消えて無くなりそうな錯覚に捕らわれ、思わず抱き締めた。
腕の中から聞き慣れた声が小さく謝罪の言葉を紡ぐ。
「ジョズ・・・すまないねい、手間かけちまって・・・」
「全くだ、心配かけさせやがって!何やってんだ、お前」
ジョズの言葉にマルコは軽く笑った。
「ホント・・・何やってんだろうねい。自分でもよく分からないんだけどよい。なんか悲しくて・・・」
寒さからなのかそれとも・・・小刻みに震えるマルコの肩を、ジョズは何も言わずただ静かに強く抱き締めた。
「いいねい・・・ジョズはいつも強くて・・・」
マルコの言葉にジョズは少しためらいながらもハッキリとした口調で答えたのだった。
「当たり前だ・・・強くなきゃあ、お前を支えられないだろうが・・・」


強く、儚く輝いて。
共に命ある限り・・・

<END>あとがきへ続く
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