管理人の宝箱

□財宝5:「願い」
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そよそよとさわやかな風が吹く。遠くで鳥の鳴く声がしているのどかな午後の一時。ビスタは甲板にサマーベットとパラソルを出して、優雅に読書をしている。今日は天気も良いし、親父に喧嘩を売ろうなんて馬鹿も現れないようだ。それぞれが好きに時を過ごしている。たまにはこのような日も良いものだとビスタはお茶を口に運びながら微笑んだ。

「相変わらず優雅だねいビスタは」

マルコが、ふんわりした笑顔を浮かべつつ近付いて来た。

「おぉマルコか。お前も読書しないか?たまにはいいものだぞ!」

「そうだねい。そうさせてもらうとするよ」

そう言ってマルコはサマーベットを引っ張りだしてきて、ビスタの横で詩集を読み始めた。

ゆったりした時が流れる。最近バタバタしていたから、なんだかいつもより休息が贅沢に感じられる。詩集を読んでいたマルコの手が止まった。しばらく同じページを眺め、遠い水平線へと目を向ける。ビスタはマルコの読んでいる詩が気になって、声をかけた。

「どうしたんだ?マルコ。感慨深い詩でも見つけたか?」

「ん?そうだねい・・・なぁビスタ・・・エースは親父に海賊王になって欲しいと思って、モビーに乗ってる。エースだけじゃなくて船に乗ってる家族全員がそう思ってる。でも親父の本当の願いは海賊王になることじゃないと思うんだよい。親父は今の暮らしに満足しているように見えるんだよい。」

「確かにな。まぁ親父の願いと俺たちの願いにズレがあったとしても仕方ない事だ。強制出来る事でもされるものでもないだろう?」

「そうなんだけどよい。何ていったらいいのかねい。親父の事はみんな共通の願いだ。家族の幸せを願うのは至って普通だろい?」

「そうだな」

「ビスタは、親父の事以外に夢とか願う事ってあるかよい?」

マルコはそう言って真っ直ぐな視線をビスタに向けた。

「ふむ・・・そうだな。人の為に生きる事は美しい事だ。だが誰しも、どの様な形であれ、欲望がある。俺は俺の剣で親父を海賊王に押し上げる手伝いが出来たらと思っているが、親父の為じゃなく己の為でもある。剣士なら誰しも最強を目指すものだ。俺の願いは至ってシンプルだよ」

ビスタは自慢の口髭に手をやりつつ、にこやかに答えた。
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