管理人の宝箱
□財宝8:双子月
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自室の執務机に両肘を乗せ 頭を抱えて俯く男が一人。
男はそのまま自分の金の髪を掻き毟ると、執務机に勢い良く額をぶつけ突っ伏した。
反動で崩れた書類の山を気にする様子もなく 男は突っ伏したまま小さく呟いた。
『糖分が足りねぇよい……』
明日までにこの書類の山を片付けなければならないのに全く頭が回らない。こんな時は、大好きな甘いモノを食べて気分転換だ。
男は席を立つと、目的地を食堂に定め 足取り軽く部屋のドアノブに手を伸ばした。
‐コン、コン…‐
『んっ…?』
ドアノブに手が触れる寸前に廊下側からノック音が聞こえ 男は一瞬手の動きを止めたが、すぐさまドアノブを捻った。
ゆっくりと開いたドアの向こう側には、満面の笑みを浮かべる和服美人…もとい、白ひげ海賊団16番隊隊長イゾウ。
男は無言でドアを閉めた。
「っ…コラ!何で閉めるんだ!!」
『お前のガキみてぇな笑顔の裏は、ロクな事が無ぇよい!!』
イゾウは慌ててドアノブに手を掛けたが、びくともしない。
何故なら 男が反対側のドアノブを両手で掴み更には片足を壁に付けて全身全霊でドアが開くのを阻止しているからだ。
暫くの間押したり引いたりの攻防戦が続いたが、遂にイゾウが折れ ドアノブから手を離した。
「……そうか…分かった。…折角サッチにホットケーキ焼いて貰ったのにな…」
去りぎわに
ボソリと呟いた
悪魔の囁き
それに釣られた
超絶甘党不死鳥
‐ガチャッ…!‐
『ホットケーキ!!!??(涎)』
‐がちゃん!!‐
『えっ?』
好物に釣られ迷う事無くドアを開き廊下に一歩踏み出した男は、その両手首にがちゃんと手錠をハメられてしまった。
手錠を見つめ驚く男のすぐ側には、ケラケラと楽しげに笑うイゾウと…立派な口髭を撫でつつ不適に笑う紳士が一人。
男は紳士の姿を目視すると、嫌そうに顔を歪めた。
「フフ…やはりマルコには、拘束具が似合うな…」
『…その胸毛一本残らず抜いてやるよい……』
男…マルコの手首にハメられた手錠は海楼石で出来ている。
悪魔の実の能力者であるマルコは、その力に逆らえず ガクンと膝を付いた。
「さて、マルコ。おれ達と真夜中のデートと洒落込もうか…」
『は?…Σぬあっ!?やっ、降ろせよい!!』
二人よりも体格の良い紳士は、力が入らないマルコの身体を軽々と横抱きに抱き上げた。
所謂、お姫様抱っこだ。
「ついでにコレもなww」
『Σなっ…!?イゾウ!後で覚えてろい!!』
自他共に認める自慢の美脚にまで錠をハメられ マルコは怒り狂った。
紳士の腕の中で必死に身を捩るが、身体が思う様に動かない。
助けを呼ぼうと口を開いたが、寸での所で思い止どまり口を噤んだ。
『ぅ゙ー…(こんな恥かしい姿…見られたくねぇよい!!)』
「フフ…お利口さんだな、」
『嬉しくねぇよい…』