白ひげ一家航海日誌(めいん)

□(旧)日誌5:チカラの在り方
1ページ/7ページ

XX年XX月XX日
雪雲に覆われた空。時折強い風。


“偉大なる航路”では四季が多彩だ。数日前まで常夏の島にいたというのに、今は大吹雪に見舞われ立ち往生している。
この先にある、ホワイティベイが根城にしている氷の島に行くところなのだが、モビーディック号には氷の海を進む装備はないので迎えに来るよう要請している。
待っている間何もする事がないので、俺を始め隊長達は食堂に集まって暖を取っていた。
「すげ〜。もうぬるくなってる!」
エースが驚愕の叫びをあげる。サッチがホットココアをいれてくれたのだが、あまりの寒さにすぐぬるくなってしまったらしい。
かくいう俺のコーヒーも当にアイスコーヒーになっているのだが、凍っていないだけマシかと自分を慰める。
俺やビスタは図体がでかいからか寒さは感じるものの、凍える程ではない。エースも自家発電できるので平気そうだが、マルコは下に薄着のシャツを何枚も着こんで、上にモコモコのダウンジャケットという重装備にもかかわらず、顔は真っ白で小刻みに震えている。
「マルコ顔色ヤバ過ぎるぞ!大丈夫か?」
エースが自分のココアを自力で暖めながら心配そうに覗き込むと、マルコは苦笑を浮かべて
「俺は暖かい島で育ったからよい、寒いのが苦手なだけだい。気にすんな」
と返した。エースは「そっか」と呟いて少し考え込むような仕草を見せたかと思うと、何か閃いたらしく満面の笑みを浮かべた。
「よし!じゃあ俺が温めてやるよ!」
叫ぶや否や、テーブルに片手を投げ出し勢いよく炎を出した。
「おお、これはいいな。テーブルを燃やさないようにな」
ビスタがそう言うと軽く笑い、マルコも一瞬不安そうな表情を浮かべたものの、素直に暖を取り始めた。
俺のコーヒーもいい感じに温まりだす。船に乗って間もない頃はたまに火事をやらかしていたのだが、最近はとんと事件を耳にしなくなった。大した奴だと感心し、褒めてやった。
「これはいいな。大分炎の調整が上手くなったじゃないか、エース」
「だろ?頑張って練習してるんだぜ」
エースは得意げに笑った。熱々になったコーヒーをすすりながら、揺れる炎を眺めていると、ホワイティベイに出逢った時の事が思い出されてきた。マルコに目を向けると、彼もまた思い出していたのか、意味ありげな笑みを浮かべてこちらを見ていた。


あの日も今日のように大雪で空が白く染まっていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ