白ひげ一家航海日誌(めいん)

□(旧)日誌7:英雄の休息
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XX年XX月XX日
明るい曇り空、穏やかな風速。


今日は緩やかな南風が吹いていて、船足はあくびが出そうなほど遅いのだが、船の揺れがあまりないこんな日は、書類の整理をするにはうってつけだ。空も白い雲で広く覆われていて、照りつける暑さもない。暑さは苛立ちを生む。落ち着いた心持ちで仕事が出来るのは実に素晴らしい事だ。


俺はマルコと二人、隊長室にこもって大量の書類の山と朝から格闘している。備品等の在庫や先月の支出票をまとめ、報告書をオヤジに提出しなければならない。
まずは、ごちゃ混ぜになっている書類を、種類ごとにまとめる事から始まり、朝はその作業で終わってしまった。昼食を足早に済ませ、今は各々が数字をたたき出すため格闘中という訳だ。


隣でテキパキと書類を片付けていたマルコの手が、ピタリと止まる。
「おっと・・・これは戦利品の報告書だねい。すまない、見落としてたよい」
差し出された紙を受け取り、内容を確認する。確かに
これは、一週間ほど前に2号船が帰還した際に提出された、敵船から押収した備品票だった。
「ふむ。紛れていたか。それにしてもすごい量だな。間違えるのも無理はない。収入票も俺が処理しよう」
「いいのかい?お前の方が仕事が増えちまうぞい?」
申し訳なさそうにこちらを見ているマルコの前には、見るだけでぞっとするくらい書類の山がそびえ立っている。

主計長はこの俺だ。補佐役に自分以上の仕事を任せる訳にはいかない。
「いや、今月は宴が多かったし、補修材料の買い足しもあったからな。支出票の量はかなりのもののはずだ。傘下の海賊達からの伝達や報告も多い。収入の方も俺が受け持つ位で均等になるんじゃないか?」
俺の言葉に渋々納得したらしく、
「じゃあよろしく頼むよい」
と呟いたので、マルコが手を伸ばすより先に書類の山を抱えあげ、自分の机に積み上げた。
「悪いねい、取らしちまって」
「なに、お前さんだと倒壊させそうな位、塔になってるからな。俺が運んだ方が安全だ」
申し訳なさそうな顔のままのマルコにニヒルな笑みで返す。
「ふふ、気にするな。この程度の事で気を使うほど薄い仲ではなかろう?」
「はは。そうだねい」
ようやく笑顔を見せた兄弟に満足して、仕事を再開したその瞬間、けたたましく鐘の音が鳴り響いた。

それは敵襲を示す音だ。
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