紳士達の暴走部屋

□禁じられた遊び〜第一章〜
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客室は一面沈んだ色の赤い絨毯が敷かれ、家具は焦げ茶で統一されていて落ち着きある基調でコーディネートされていた。
大きな窓の外には街の美しい夜景が一面に広がり、壁やテーブルに置かれた照明は中に炎が閉じ込められた不思議な造形でより幻想的な空間を演出しており、
テーブルの上には冷やされたワインが2本用意され、様々な種類のチーズと色とりどりの紙に包まれたチョコレートが上品に盛り付けられた皿が並べられている。

部屋の角に置かれたベッドはかなり大きなもので、大柄のビスタはベッドのサイズを少し気にしていたのだが、いらぬ心配だったと笑い、満足気に部屋を眺めた。
マルコはというと、ベッド脇の花瓶の前でくんくんと鼻をならしていて、それに気付いたビスタはバスローブ姿ながら優雅な足取りで傍に立った。
「気になるか?部屋一杯に香りが広がってるから無理もないがな」
「部屋に入った瞬間匂ってたから何かと思ったよい。コイツが犯人だったんだねい。嫌いな香りじゃねえけど、なんかずっと嗅いでたら頭がクラクラしてきたよい」
苦笑いするマルコを見てビスタは楽しげにくっくっと笑い声を立てると、簡単に説明を述べた。
「これはジャスミン、花の精油の王とも称されている高貴なものだ。リラックス効果が高く心に自信を持たせてくれる。香りは強いが、まさにベッドルームに最適な花だな」
そして、悪戯っぽい笑みを浮かべるとマルコの肩を抱き、耳元へ囁くように
「それにジャスミンは“夜の女王”とも呼ばれていてな。催淫の魔法で甘い一夜を楽しませてくれる花だ。あまり近くによると魔法にかけられてしまうかもしれんぞ」
と、付け足した。

頭がクラクラしたのはそういう訳かとぼんやり思いつつ、マルコはとろんとした、しかし強い光は失っていない瞳をビスタに向け、もたれかかった。
「はぁ・・・なるほど。もう手遅れかもねい。でも・・・極上のアイスワインを味わう前にベッドに倒れる訳にはいかないだろい?」
バスローブを纏った姿で吐息混じりにそう囁き返したマルコの姿はどこか扇情的で、どっちが魔法にかけられたか分からんなとビスタは心の中で苦笑しながら、
感情の揺れを隠した涼しい顔で、
「それはそうだな。早速ワインを開けようか」
と告げたのだった。

(余談だが、ビスタは普段宿では裸で過ごすのだが今夜は一人ではないので自重してバスローブを着ている。
ちなみに、マルコは普段バスローブなぞを使う習慣は無いに等しい。しかし、今回の宿泊場所が高級ホテルさながらの場所のため、雰囲気に飲まれて着てみる事に。
・・・というのは表向きの理由で、この姿をビスタが喜ぶであろう事を想定して敢えて着ているというのが本当の理由だったりする。いつも余裕な顔をしているビスタを翻弄する事を、マルコはささやかな楽しみとしているのだ)
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